国立新美術館「DOMANI・明日展2010」

国立新美術館で2010年12月11日から21011年1月23日まで行われているDOMANI展を見てきました。

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上の作品画像/町田久美 《手紙》 2009
雲肌麻紙に青墨,茶墨,岩絵具,顔料,色鉛筆
個人蔵 Photo:渡邉郁弘
Courtesy of Nishimura Gallery

この美術展は「未来を担う美術家たち〈文化庁芸術家在外研修の成果)」という副題が示すように、文化庁の派遣で国費で主に1年~3年間海外研修に行った作家たちの現在をピックアップして展示したものです。

これまで12回開催されているそうです。今回は近代以降の具象絵画の流れを色濃くしている作品は、日本画の神戸智行の作品だけで、あとは写真や彫刻やオブジェ、そして現代美術の多様な作品群です。

今回選定された作家は以下のとおり

古郷秀一(彫刻) 三好耕三(写真) 遠山香苗(絵画) 近藤高弘(彫刻家) 流麻二果(絵画) 深井聡一郎(彫刻) 鈴木涼子(現代美術) 赤崎みま(写真) 神戸智行(日本画) 近藤聡乃(現代美術) 町田久美(絵画) 山口紀子(ファイバーアート) ※以上チラシ記述より

見たところ研修先はアメリカとイギリスを選んだ画家が多かったと記憶しています。

海外研修と言ってもその地に住んで創作活動をするための資金を国が援助するもので、活動自体は自由なようです。

さて、日ごろ現代アートにつながる哲学的な勉強をそれほどよくはしていないもので、現代アートなるものを深く読み取る気で見てはいません。それでも、この中のいくつかは楽しめました。

特に一生懸命見た作家は3人。アンテナに引っかからない作家は軽く見て素通りしました。

今回の展示作家に関する評論や作家の言はほとんど目にしたことがないので、あくまで主観的な実感を述べてみます。

まずはじめの方に展示されていた彫刻の古郷秀一。

※写真/古郷 秀一「木の回廊Ⅷ」2002年
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この作家の作品は凹凸が気持ちいい。触りたくなる彫刻です。いや既に視覚を通して、私の手のひらは刻まれた木をざらざらと触っているのでした。

木を素材にした「木の回廊」はやわらかい凹凸とかすかな隙間が小気味いい。

※鉄を素材にした作品
http://www.mashiko-museum.jp/jextra/hurugo/hurugo.htm

鉄を素材にした作品の中で「限定と無限定」は対比させた二つの鉄の造形ですが、片方は小さな鉄の棒をつないで棒と隙間の濃淡を段階的に作っており、増殖してゆくような広がりを秘めています。

「たわみ」は鉄という素材をたわませて、見る者の「鉄が硬いものである」という観念を解放しています。

彼の作品は極めて感覚的に楽しめ、作意はどうであれ気持ちいい。


次に、最もじっくり見たのが流麻二果の作品です。

以前にVOCA展で見たような覚えがありますが、今回とっても新鮮でした。

※写真/流麻二果「静音」2010年 作家蔵
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完全な抽象画ですが、全ての作品に人物が見えます。いや造形的にはっきりと見えるというよりもぼんやりとそれらしく浮かんでくるのです。「何がどう」と問われても具体的にはここで説明できませんのでご想像にお任せいたします。

透明感のある色彩と流れる色面線描の交差によって空間の奥行きとふくらみがかもし出されています。

見るほどに生命感がダイナミックにふくらんでゆきます。

私が彼女の絵の中に見た人物像は、生命の宿された空間が私の内面と共鳴し鼓動して生み落とした幻影でしょうか。

今度また、この人の展覧会があったら見に行きたいと思いました。

出来れば一点欲しいな。

※流麻二果オフィシャルブログ
http://manika.iza.ne.jp/blog/1/


最後に町田久美。

ずっとこの人の作品の実物を見たいと思いながら、自堕落な私は探そうともせず、このたび「やっと会えたのね」といった感じです。

織り込まれた「線」。エネルギーがあります。実物を見ないとわかりません。

大胆で細やか。線だけど空間。新しいけど懐かしい。身近でシュール。平面の奥行き。

空間を引き締める点景のように配された銀箔がにくい。

奥深い濃淡。

これぞ「日本画」現代アート。

是非見に行きましょう。


私は韓国の作家との交流が多く、彼らのプリミティブでエネルギッシュな表現に魅力を感じていますが、今回は現代アートながら日本人としての血が少し騒ぐような作品に出会えました。静謐な画面やたたずまいは日本的です。日本的であることが世界的であります。

月刊ギャラリー1月号に新春対談の中で「オークション会社クリスティーズの人が、現代アートにおいて中国・韓国より圧倒的に日本の作家の方が技術とか創造の世界も優れていると語った」というような内容がありました。

この日本の洗練された技術は現代アートに始まったことではありません。

古美術品。「いい仕事してますね」 これが日本です。

西洋のマーケットで売れるかどうかという点では日本の作家はいいとこまでいっているのでしょう。もし文化庁派遣の美術家たちが世界市場に出てゆけば、国益にかなったと言えます。

ただし、アートというものを技術や創造性、ましてやマーケットを中心に見ると本質を外れる場合がありますのでご用心。

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この記事へのコメント

horipera
2011年06月13日 01:01
はじめまして。BLOG RANKINGから失礼します。
DOMANI明日展で展示されていた流麻二果さん、7月7日に行われる予定のアートマスターズオークションに出品されるようですよ。近代絵画がメインなのでうまくいけば10万円以下で落とせるかもしれませんよ。この機会に一度覗いてみてはいかがでしょうか。
2011年06月13日 11:44
horiperaさんへ
情報ありがとうございました。

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