韓国若手画家・田奉烈(チョン・ボンヨル)「浄化するブルー」

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韓国に田奉烈(チョン・ボンヨル)という画家がいる。
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1973年生まれなので、2010年代時点では画家としてまだ若手の部類に入るが、油彩を使った作画の技術は一流である。

ソウル郊外に夫人と二人で暮らしている。1歳のときに両足が小児麻痺にかかり、幼い頃から松葉杖を突いて歩いている。しかし車も自分で運転し「別に不自由ではない」と言う。

この画家を知ったのは2008年、美術評論家の申恒燮(シン・ハンソプ)から紹介を受けてのことだった。

私がはじめて彼を訪ねたのは慶尚南道の大邱(テグ)という都市にアトリエがあった頃で、それからまもなく彼はソウルに出てきた。

出会ってから今日(2017年記事追加)に至るまで、幾たびも田奉烈のアトリエを訪ねた。そこで、全く力が入らない両足を松葉づえで支えながら300号サイズの大作も描いてきたことや、夫人が篤実なクリスチャンで、本人もまた日曜日には夫人に連れられて礼拝に通っていることなど彼の生活面についても知った。

彼はまたこんなことも言っていた。

「両足が不自由だからといって、自分を特別だなどと思っていません。」

その言葉は、強がりではなく、自分の運命を受け入れてなお覚悟のある言葉のように聞こえた。

また「作品に込めた意味を聞かれることはあまり好きではなく、ただ感じるままに見るのが一番いいことだと思っています。」

と言いながらも、自分がどんな動機で描いているのか、そして観る者が作品を深く感じとるためのヒントを語ってくれた。

彼が語るときは真剣なまなざしだが、けっして絶やさない笑顔が人のよさを感じさせる。

■2014年8月撮影写真と昔描いた自画像の一部
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●超現実的風景
彼の作風はシュルレアリスムと言ってもいい。かといってサルバドール・ダリみたいな衝撃的とでもいうべき造形は表われず、ルネ・マグリットやポール・デルボーのような人間の深層意識から静かに湧き上がるような心象風景である。

下の絵は、アトリエを訪問したときは描きかけ中の作品だった。波濤が頂点に達した瞬間の息をのむ光景だが、そのまま時間が止まってしまったように静かだ。さらにこの波濤は生命を宿して何かに化けようとしている。
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よく見ると、朝日を受けて輝く波濤は鳥が大空に向かって羽ばたいている姿だ。中央に嘴が見える。

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この二枚の作品のうち、上の方の絵では、結ばれた手紙が白い雲を背景に空に舞っている。「From(どこかから)」と名付けられたこの絵は、まさにどこかから送られてきた手紙が主役である。この手紙は、まるで「天からのメッセージ」。

下の絵に描かれている少女は、その手紙を左手に持って、海を見つめて呆然とたたずんでいる。

絵を観ている者は、いつしか少女に自分自身の人生を投影し、かつて受け取ったであろう天からの手紙に想いを馳せる。

●浄化するブルー
田奉烈の絵の特徴的な色彩は、空や水の色「ブルー」である。

彼のブルーは私を一つの錯覚に陥らせる。それは、まるで絵の具自体に光が練り込められていて、絵の具の中からその光が外に現れ出ているような錯覚だ。

光を放つブルーは、おそらく作家の精神性が醸し出しているのであろう。それは沁みいるように私たちの内面を洗ってくれる。

もう一つ色がある。「宇宙」の色たる「黒(玄)」。

田奉烈によって描かれた漆黒の闇は、宇宙自体がそうであるように限りない抱擁力に満ちている。

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田奉烈の作品に満ちた光と闇の息づかいは、夢幻なる世界へと私たちを誘ってくれるのである。

韓流ファインアート

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 ※2015年6月撮影アトリエ風景


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