画家の箴言名言(2)―マチス「デッサン・精神的な光」

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「デッサンにおける顔の性格というものは、その様々なプロポーションによって決まるのではなく、顔に反映している精神的な光によって決まるものである。」

アンリ・マティス(Henri Matisse, 1869- 1954)の初期のフォービズムから晩年の切り絵まで、その原色による自由な彩色を見ていると色彩の画家としてのイメージが強いのですが、

実はデッサンこそがマチスの天分を明らかにしてくれる作業です。

マチスの抑制され美しく均衡を保った描線は、モデルの形状を正確に写し出すというよりもモデルの内面を生き生きと描き出そうとしています。

マチスの言葉の中の「精神的な光」とは、まさにモデルの内面にかかわるものですが、作品に漂う無形のエネルギーのことです。

それはどんな風にあらわされるのでしょうか。

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    ※マチス写真

●見るということ

ここにもう一つマチスの言葉を紹介しましょう。

「私たちは物事を見るのに慣れすぎて、よく見ようとはしません。物事をほんの表面でしか受け止めていないと言ってもいいでしょう。そしてそれ以上深くは感じようとしないのです。」

この言葉は、マチスがいかに物事をよく見て、さらに深く感じようとしているのかを物語っています。

マチスの芸術は、他の多くの巨匠たちと同じように、世界に充満する内的な光を捉えるところから始まります。

見るというよりも感じることでしょうか。

作家において、描こうとする対象に秘められた「本質」を感じ取る目があってこそ、はじめて、描かれたものは存在のエネルギーが付与されて光り輝くはずです。

フェルメール「真珠の耳飾りの少女」珠玉のトローニー


●受ける前に与える

では、モデルという対象から本質を感じ取るにあたって最も重要なことは何でしょうか。

私たちは見ようとしたものしか受止めることができません。

つまりモデルから自ずと放たれている精神的な光をいかに受け止めるかということの前に、主体としての画家の方からいかに働きかける(発信する)かということが重要です。

画家の内面にあってほとんど無意識のうちに対象に投影される心情的な力のレベルが、出来上がった作品の価値を決定付けると言っても過言ではありません。

「精神的な光」は、まず画家の内側から発せられ、モデルの内面に共鳴して返ってきたものを、再び画家が感じ取って作品上に反映させます。

そのとき、モデルに秘められた本質が、画家の内面と幾たびも交流することで、画家の内面によって熟成・拡大・強調されて作品上にあらわれます。

それは顔の性格という次元ではない存在の本質として描き出されるのです。

であればこそ作品は生命を宿すのです。

鑑賞者は、再現されたモデルそのものを見るのではなく、画家によって強調された美すなわち画家の内面がプラスされた美を見ることになります。

そこに至るまでの出発点は、画家が対象を見るときに無意識に与えようとした情的な力なのです。

その情的な力を「愛」と呼んでもいいでしょう。


●デッサンが教えてくれるもの

私たちにおいても、主体がどう見るかによって対象物は全く違ったものに見えるものです。

また何人かの人が同じ対象物を描いたときに、描く人によって作品が全く違った印象に出来上がるのがほとんどです。

なぜそうなるかといえば、描く技術そのものに原因があるのではなく、技術を支えている内的視点と質的内容の差異が結果として作品に現われるからです。

ゆえに、

優れた芸術家は、最初から高く深く広い内的視点を持っているといわざるを得ません。

それを技術的に表現するときに芸術家としての葛藤があるのだと思うのです。


デッサンは線描のみで構築されるからこそ画家の内面が如実にあらわれてしまいます。

マチスにとってデッサンは、一つには自らの内面を確認するための手段であったのかも知れません。

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     ※マチス ドライポイント
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     ※マチス リトグラフ

●鑑賞

私たちも人生を真に豊かなものにしようと思うならば、あらゆるものを習慣的に漫然と見過ごしてはならないはずです。

例えば一枚の絵を前にして、そこからより深い美を感じ取ろうとするならば、自らの知・情・意という心の機能を総動員すると同時に、なによりも画家が対象に向けて為すように「愛情に満ちた目」で見ようとしなければなりません。

私たちが一枚の絵から受ける感動は、究極的には、自分が投影させた内面の質と量の反映であり、その結果に過ぎないのですから。

(1)棟方志功
(3)ポール・セザンヌ「修行僧のごとく」
(4)パウル・クレー「嘘の無い絵画」
(5)平野遼「本物の光」
(6)パブロ・ピカソ「虚構の中の真実」
(7)高山辰雄「いのちに触れた筆」
(8)パブロ・ピカソ箱根彫刻の森美術館から
(9)フィンセント・ファン・ゴッホ「画家の生き様」


ルノワール「裸婦(ヌード)」北漢山のチンダルレ

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