絵画の見方(2)「自分のこととして絵を見る」

人間は自分に似たものを見ることに刺激と喜びを覚えます。惹かれる絵画とは、どことなく自分自身の形状や性質に似た要素が内在したものが多いのです。

今回も絵画の見方(1)「主観的鑑賞」の続きです。

子供を持つ親で、自分の子供と隣の子供のどちらがかわいいかと問われれば、誰しも「自分の子供」と応えるでしょう。

それはただ単に「血が繋がっている」ということや「家族として一緒に過ごしてきた時間が長い」というだけの理由ではありません。

実は理由などないのですが、あえて言うならば「自分に似ている」からです。

「顔かたちが似ている」というだけでなく、「雰囲気が似ている」ということもあります。

絵に惹かれるということは、自分でも気づいていないけど自分自身の中に確かに在る要素を絵の中に見出しているのです。

●人物像

皆さんは鏡を見るのがお好きでしょう。

このブログを読んでいる人は特にそうです。そして、皆、個性的な美を有した女性と男性です。私は会わなくてもわかっている・・・かもしれません。

絵もまた見る人の心(内面)を映し出す鏡のようなものですが、美しい絵を見るということは自分の美しい心(内面)を見ることと同じです。

だから気持ちいいのです。

絵画の中心的モチーフが人物である場合、最終的にその人物像のたたずまいや顔かたちに目が行きます。

画廊などの絵画展会場で人物像に惹かれている人をよく見ると、「その人の顔立ちや雰囲気が絵の中の人物像と似ている」という傾向があります。

これは、私がこれまで絵画の販売現場に立ってみての一つの結論です。

あくまで私の感覚的な数字ですが8割方そうです。

作品に惹かれて見ている間は「自分とその人物像が似ている」ということに対する自覚はないようです。ただし似ていると気づいたとたん益々惹かれていきます。

また、人物像を気に入る人の中には、妻や子供など家族に似ていると言う人も多くいました。

ちなみにこれら人物画は、美人画や特定の人の肖像画的なものではなく、作家が人物をモチーフにして人間の普遍的で内的な美をあらわそうとして描いたものです。

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         ※張淳業「花と少女」


●風景画

人物画は形状的な要素が強いので「似ている」という言葉が当てはまりやすいですが、では風景画はどうでしょう。

以前、栃木県の真岡というところでアート・セミナーを行ったときに、ある婦人がこんなことを言っていました。

「自分は初めて絵を買ったときは、そんなに欲しいという気持ちも無く見ていたのですが、販売員の方に強く押されて買ってしまいました。」

その婦人に「どんな絵ですか?」と聞きました。

すると「外国の田舎を描いた風景画」だというのです。

「今は飾って見ていますか?」

「ええ」

「見ていてどんな気持ですか?」

「じつは最近とってもよくなりました」

「どうしてですか?」

「飾ってだいぶ経ってから気づいたのですが、自分の生まれ故郷の風景にそっくりなんです」

もう戻ることもない故郷には親や兄弟や友達との愛の思い出が充満していて、それを思い起こせば暖かい気持になるのです。

結局このご婦人は一枚の絵と出会ったことをとてもよろこんでいました。

どことなく惹かれて気に入る絵には、必ず自分自身の内面が潜んでいます。

その内面を感じることは、はるか遠い記憶であったり、小さいときの愛の思い出であったり、そうした既に忘れ去ってしまった記憶がかすかに蘇えるような感覚なのです。

(前世の記憶の物語 by RYOTA⇒「愛の舞踏」

それが妙に懐かしく、いや懐かしいという言葉さえ思い浮かばないほどワケもなく惹かれるのです。

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         ※朴仁浩「農家の春」(パステル)

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         ※金敬烈「自然の肖像」


●抽象画

さて、具体的な形のない完全抽象の場合はどうでしょうか。

まず色があります。一つ一つの色はある意味で「個性」です。

例えば「冷静」「静か」「清らか」「清清しい(すがすがしい)」という漢字には「青」が使われていますが、青にはそうしたイメージが確かにあります。

千差万別の色に違いがあり個性があるように、私たち人間も十人十色、百人百色です。

色が調和して美が表われるように、人々の個性も調和してこそ、世界が美しくなるのです。

次に線はどうでしょうか?

繊細、豪胆、激しい、やわらかい、やさしい、強い・・・

また、構図や造形やマチエール(画肌)の質感にも見る人の内面が反応します。

ここで付け加えておくことは、人間の内面は複雑で、様々な要素を孕んでいます。したがって自分を素直にすればけっこうたくさんの絵に反応できる(楽しめる)ものです。

そして光と空間は、普遍的な世界に充満する美であり、人々の心を癒すものです。

人は空を見上げて「形がないのでからわからない」などとは言いません。空から何かを感じたり、考えを誘発することはありますが。

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          ※黄宇哲「麗しき世上」

一枚の絵に惹かれるのは、必ず、自分自身の中に原因があります。

一つ一つの絵が持つ個性は自分と相対する(似ている)要素において響き合うのです。

ならば、惹かれる絵は自分自身だと思って、つまり自分のこととして、もっと主体的に主観的に関わってみたらどうでしょうか?

きっと、鏡に映った貴方の本当の美しい姿が、ヴェールを脱ぐように見えてくるでしょう。
キリスト磔刑図

絵画の見方(3)「美術館での鑑賞のしかた」に続きます。
絵画の見方(4)「心に映るものを見る」
絵画の見方(5)「誰でも絵が好きになる鑑賞法」

絵画の見方(1)「主観的鑑賞」

カタルシス体験2/鴨居玲展「酔っぱらい」」


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