韓国画家・朴芳永評論(2)「東洋的なものへの回帰」

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『遥かなる大地を渡る風に民族の魂の鼓動が聞こえる』
(1)「シンパラム」のつづきです。

②東洋的なものへの回帰

 朴芳永の作家としての作業を振り返ってみると、1985年、弘益大学大学院生時代に4人の作家による「蘭芝島(ナンジド)」というグループを結成し、当時実験的なインスタレーション作品で韓国現代美術界の注目を集めたが5年ほどで解散する。その後「観念的な新しさのみを追究し物質的に拡大していく」現代アートから方向性を転換し、精神的な深みを求めて平面作品を描き始める。1990年代前半にはニューヨークに渡りアニメーションの制作に関わるかたわら油彩による写実的な人物画を描いていった。当時の作品にはどことなく都市生活の寂寥感を滲ませたものや自画像などがある。アメリカでの生活が自らの民族の血を見つめ直す契機となったのか、東洋的な精神世界への回帰を再び決意して韓国に帰国する。

    ■アメリカ時代の油彩習作作品
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 朴芳永は高校時代に全国学生書道大会で最高賞を受賞している。現在の韓紙に水墨とアクリル絵の具による作業は、東洋画の運筆法の基本となる書の技術をマスターした土台の上に、それを意図的に捨てて独特の現代的な絵画表現に昇華させたものだ。朴芳永の一見自由奔放な描線は習熟された運筆の基本に支えられているので芯があってゆるぎがない。描こうとする対象から受けるエネルギーを作家自身の内側から湧き上がる情的な衝動に換えて一筆で画面上に噴出させる。
 東洋画の画論では中国5世紀南朝斎の謝赫が「古画品録」の中で説いた「画の六法」が有名だが、古今の画家たちが最も重要視したのが六法の中の「気韻生動」(絵の中に天地の気韻が生動すること)である。朴芳永の作品は決して東洋画の伝統の上に立っているわけではない。しかしこの気韻生動は後に述べる彼の作品の魅力を表すにふさわしい言葉である。
 もう一つ、これも東洋画の概念である「余白」について彼に尋ねてみた。すると「パンソリ(物語に節をつけて謡う民俗芸能)を謡うときに背後で聞こえる滝の音や木々のささやきだ」という応えが返ってきた。彼の絵の余白からも何かが聞こえて来そうだ。それははるか大陸の草原を駆け抜ける馬の蹄の音であったり、家族団らんの笑い声であったりする。それらは画面に投じられた奔放な絵の具のほとばしりや描線の生動感に呼応してとてもにぎやかだ。


(3)「文人画と民画」につづく
韓流ファインアート
朴芳永PAK BANGYOUNG個展「毛劍」Web gallery14.12


    ■朴芳永作品
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