高山辰雄「いのちに触れた筆」画家の箴言名言(7)

「単細胞にも心がある」 高山辰雄

日本画の画家、高山辰雄(たかやまたつお/1912年~2007年)は5年ほど前に95歳で亡くなりましたが、昨年12月20日から今年2月3日まで故郷の大分(市美術館と県立芸術会館)で生誕100年の記念展が行われています。

2013年1月20日放映のNHK新日曜美術館「いのちに触れた筆 日本画家・高山辰雄」は、高山辰雄の作品の魅力をあらためて感じさせるものでした。そして作品を支えている彼の宇宙的な視点を知ることができました。

    ■高山辰雄「いだく」1977年
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「単細胞にも心があるはず。」本人が確信を持って言い放ったこの言葉から、高山が絵を描くにあたって、いかに「生命」に対する強い意識を抱いていたのか、そして描きながら常に「生命」を実感していたのだろうということがうかがえます。

「原始時代よりもっともっと前から生物本然の何かと共通したあるもの、地上に生をうけた時の心、アミーバーの心とでも云(い)いたいものです。つかめないかも知れないが、死ぬ迄(まで)にはアミーバーの心とでも云うものを知りたい。」
(新日曜美術館HPより)

    ■高山辰雄「三人」2001年
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    ■高山辰雄「高原」2002年
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    ■高山辰雄「牡丹洛陽の朝」2004年
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高山辰雄といえば「聖家族」をはじめとする「人物画」、「花」、「風景」など、それぞれに際立った秀作を数多く残しています。彼が描く一つ一つの事物から湧き立つ生命感は、その事物を取り囲む「空間」に溶け込み、視覚的な香りとなって画面に漂い、かつうごめいています。

彼の絵の多くの場合、人物や花といったモチーフ(事物)とそれを取り囲む空間との境目は明確に線引きされておらず、事物と空間は混然と連鎖してまるで一つの存在であるかのようです。一つの存在となって画面全体がうごめきながらも、凛とした静寂の中に封じられています。

作画の技法は力強い筆づかいの点描で、一見単色(モノトーン)に見える画面の中に多様な色彩を忍ばせています。たとえば絵の中で黄色く見える部分を顕微鏡で見ると赤や黒など様々な色の粒が見えます。見る者の眼で混合され単色に見えるだけです。それがなんとも深く美しい。

    ■高山辰雄「聖家族」1993年
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量子物理学では真空というものはないといいます。宇宙空間もなにかでびっしり埋まっているのです。分子や原子や素粒子の世界を覗けば、原子核と電子の間には、比率的には太陽の周りを地球が回っている距離以上の距離があります。

それがフラクタルに極小から極大まで続いて動いているのが我々の住む宇宙です。太陽系も銀河の中心を軸に回っており、私たちの銀河もまた何かを中心に回っているのです。宇宙は一見静かなのですが動いているのです。

また全ての事物はエネルギーを宿しています。エネルギーは事物から離れるにしたがって微細に薄くはなるけれど、エネルギーの連鎖をたどってゆくならば、宇宙全体(全ての存在)はエネルギーレベルで触れ合い結ばれていることになります。

人間の肉体は一人一人分かれていてそれぞれが個別の相を呈しています。しかし個々人から発せられるオーラや、肉体という物質次元を超えた意識という目に見えない部分は交感し繋がっています。

たとえば、他人を傷つけると自分も心に痛みを感じるものです。家族など近い関係ほどその痛みを強く感じやすいのですが、一方、人種も存在する空間も自分とは遠いアフリカの子供が餓死寸前の状態にある姿をTVで見た時にも痛みを覚えます。それは我々が繋がってることの証拠です。

一つ一つの存在、それを生命という言葉に置き換えれば、草も木も山も空気もすべては生命という目に見えないエネルギーにおいては互いに繋がり一つなのです。そして平等です。高山辰雄はそのことを日本画という作品を通して私たちに見せているように思われるのです。

私たちが高山辰雄の絵に不思議な魅力を感じるのは、彼の絵の中で静かに息づく生命感に私たちの生命が惹きあい、呼びこまれ、ダイナミックなうねりとなって絵画という宇宙空間に解き放たれるからのなです。

    ■高山辰雄「聖家族11」銅版画 1976年
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「私の体、人間の体の組成は、宇宙を形作る物質とまったく同一のもので、それ以外の何も持っていません。考えてみれば、我々(われわれ)も星屑(くず)の一つと同一のように思えないでもない。」(新日曜美術館HPより)

宇宙を組成している全てが同じ元素で築かれているならば、大きな銀河や星も、反対に微細な素粒子も、私たち人間と同じように心を有しているかもしれません。

高山辰雄はアミーバという有機物だけでなく岩絵の具という鉱物の一粒にも心があることをきっと実感していたに違いありません。

極小から極大にいたる宇宙をまるごと意識と無意識の内に抱いて絵を描くことで、この物質が支配する世界に高次元の「愛」を投射して見せようとしているのです。

    ■高山辰雄「椿」
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山種美術館「生誕100年高山辰雄・奥田元宋―文展から日展へ―」

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画家の箴言
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(2)アンリ・マティス「デッサン・精神的光」
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