ミケランジェロ彫刻「ダビデ像」気高い意志

ピエタと並ぶミケランジェロの代表作「ダヴィデ」(1501~1504年制作)は、現在はフィレンツェのアカデミア美術館に展示されています。これは大理石でつくられ身の丈5.17メートルという巨大な彫刻像です。
ミケランジェロ彫刻「ピエタ」美しきミーメーシス

下のふたつの写真を見比べてください。像と同じくらいの高さから写した上の写真は上半身頭部が大きく、アンバランスに見えますが、これは、設置予定場所が正面下方から仰ぎ見る高さという人々の視点を計算に入れて作られたからというのが定説です。

つまり下の写真のように下から見あげることで均整の取れたプロポーションになるように作ったのです。

■ミケランジェロ「ダヴィデ」
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この像は、元来フィレンツェ市庁舎のあったヴェッキオ宮殿の前に飾られていました。のちに都市国家フィレンツェ共和国が周囲を取り囲む強大な対抗勢力に脅かされるようになったときには、この像こそフィレンツェを象徴するものだという解釈がなされるようになりました。

その解釈を詳しく見ていきましょう。

■当時の市庁舎前に現在はレプリカが置かれている
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近代に入ってから「芸術は芸術家の自由な自己表現」という考え方が生まれましたが、ルネッサンスのころにはそうした考え方ではなく、芸術は、キリスト教をはじめとする宗教や哲学を基盤として、政治的社会的色彩の濃いものでありました。

「ダヴィデ像」に関して、ウィキペディアによると、

左半身は体重をかけずに足を外側へ差し出してややリラックスしているのに対し、右半身には戦いの前の緊張感が溢れており、静脈の浮き上がった右手や堅く踏みしめられた右足、わずかによじらせている胴体の様は、ダビデがいままさに攻撃を開始しようとしているのだという予感を観る者に与える。これは、旧約聖書・詩篇16における「主は右にいまし/わたしは揺らぐことがありません」というダビデ自身の言葉とも照応する。すでにゴリアテと戦う決意を固めながらまだ行動には移してはいないという、意識的な選択と行為のはざまの瞬間を描写しているこの像は、すなわち外敵を前にした共和国市民としての責任を問いかける象徴としての効果をもたなければならないというのがミケランジェロの意図だったのである。

共和制民主主義の擁護者としての顔を見せていたメディチ家は、重要な政治権力を全て自分たちに集中させていて、実際には共和制民主主義の敵でした。

ミケランジェロ自身はメディチ家の豪華王ロレンツォに厚遇され、メディチ家からの恩恵を受けて芸術家として成長していったのです。にもかかわらず、1494年にメディチ家がフィレンツェから追放されたあとのことではありましたが、彼が「ダヴィデ」制作の注文に応じ1501年に着手したのは、共和主義国家フィレンツェ市民としての誇りを守ろうとする意志があったからと思われるのです。

彼が「ダヴィデ」において表現しようとしたのは、誰もが知っている聖書の中の英雄という次元ではなく、フィレンツェ市民に共和主義の自由を守るための強い意志を持たせようとする明確な政治的意図があったのです。

上記ウィキペディアと少しダブりますが、20世紀を代表するミケランジェロ学者ともいえるトルナイが、ダヴィデ像について美学的な見地から語っている説明を紹介しましょう。

「ダヴィデ」の肉体の取り扱い方は新しい。・・・自然に人体の各部分は、動きがない時ですら、その形態によってその機能を示している。休息している器官の主要な構造を示しながら、芸術家は、同時に潜在的な活動力を暗示しているのである。たとえば、右手や右腕は、受動的でありながら、その筋肉や血管がうまく強調されて、力や動的潜在力をひきだしている。

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つまり、ダヴィデが巨人ゴリアテに対峙して、これからまさに戦いの一歩を踏み出そうとするその直前の力に満ちた緊張感、ダヴィデの肉体と精神に潜在する動的な力を、完全とも思える静の造形の中に潜ませることで、ミケランジェロは彫刻ダヴィデの中で脈打ち躍動する生命を、むしろ一層感じられるように見せてくれました。

ミケランジェロは無機質な大理石の塊に生命を吹き込んだのですが、それは当時のフィレンツェ市民に、共和制という自分たちの伝統的な美徳を守るにあたっての強い意志と気高い精神の力を植えたに違いありません。


芸術作品とは、このように人間の精神に作用し、その作品に宿された霊性がそれを見る人の内面と共鳴するときに、おおいなる力を発揮するのです。

芸術に触れるとき、人々はふと我に帰ります。

そして魂に問いかけます。

はたしてわが魂の求む真の喜びとは何なのだろうかと。


絵画の価値(6)精神性その3・磯部晶子「本性に語りかける花の絵」

ミケランジェロ彫刻「ピエタ」美しきミーメーシス

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ミケランジェロ彫刻「ピエタ」美しきミーメーシス
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