プーシキン美術館展(フランス絵画300年)ロシア富豪の芸術魂

愛知県美術館(2013年4/26~6/23)、横浜美術館(7/6~9/16)、神戸市博物館(9/28~12/9)で開催されているプーシキン美術館展―フランス絵画300年をダイジェストで伝えます。

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モスクワにあるプーシキン美術館は今年で設立100年を迎えます。プーシキン美術館に収められている名品の多くは、レニングラード(現サンクトペテルブルク)のエルミタージュ美術館を経由していますが、もとをただせばロシアの慧眼ともいえる個人蒐集家たちのコレクションがもとになっています。

1917年に勃発したロシア革命によって彼らのコレクションは国有化されました。

古くは、18世紀にロシア帝国の女帝として在位(1762~1796)したエカテリーナ2世が絵画収集に巨額な資金を投入しました。

また、ロシアの由緒ある家柄ユスーポフ家、ゴリツィン家、バリャチンスキー家のコレクション、そして特にセイゲル・シチューキン(1854~1936)とイワン・モロゾフ(1871~1921)が蒐集したフランス絵画の名品は、彼らの芸術に対する眼目の高さを見事にあらわしています。
プーシキン美術館展公式HPのコレクター紹介ページ

それでは、プーシキン美術館展の展示作品の画像をビッグネームを中心に紹介しましょう。


●第1章 17-18世紀―古典主義、ロココ

■カルル・ヴァン・ロー「ユノ」1736年 132×141cm
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ユノはローマ神話にあらわれる最高神ユピテルの妻。ヴァン・ローはロココと古典主義の融合を目指し、それを実現した作品といえる。

■フランソワ・ブーシェ「ユピテルとカリスト」1744年 98×72
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「ブーシェにとって神話主題はドラマをなぞるためのものではなく、女性美とエロティシズムを謳い上げる舞台装置にほかならなかった」という解説がある。ロココ美術の愛好家であるユースポスの所蔵作品。


●第2章 19世紀前半―新古典主義、ロマン主義、自然主義

■ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「聖杯の前の聖母」1841年 116×84cm
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のちのロシア皇帝アレクサンドル2世となるA・ニコラエヴィチがイタリア旅行中にアングルに依頼したものでローマで制作された。これは新古典主義とロマン主義の融合とも言え、今回の展示全体のなかでも最も優美で清楚な美しさをたたえた作品。

■ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「突風」1860年代半ば~1870年代前半 48×66cm
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「人間も天候も植物も自然の一要素として風景全体をとらえようとする」コローの自然主義的な態度をうかがうことができる。

■ジャン=フランソワ・ミレー「薪を集める女たち」1850年代前半 37×45cm
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バルビゾン派の作品の蒐集家として知られるセイゲル・トレチャコフが購入した本作は、トレチャコフ・ギャラリーを経て1925年にプーシキンに収蔵。劇的な光の演出が光る。

●第3章 19世紀後半―印象主義、ポスト印象主義

■エドアール・マネ「アントナン・プルーストの肖像」1877~80年頃 65×54cm
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これぞマネ。

■ピエール=オーギュスト・ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」1877年 56×47cm
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モデルはコメディ・フランセーズで人気を博した女優である。1903年にデュラン・リュエルの手に渡り、1904年にモロゾフが購入したもので、1948年にプーシキン美術館に収蔵。これぞ印象派。

今回この美しい婦人と少し語り合いました。うっとりと私の話に聞き入るのでした。
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■エドガー・ドガ「バレエの稽古」1875~77年 厚紙にパステル 50×63cm
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シチューキンが所蔵した5点のドガの作品のひとつ。踊り子はドガの代表的な題材である。

■アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「窓辺の女」1889年 厚紙にエサンス 71×47cm
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シチューキンがパリで購入した作品。ラフな描き方だけどこれぞロートレック。

■ポール・セザンヌ「パイプをくわえた男」1893~96年 91×72cm
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シチューキンのコレクション。多視点からの描写による物体と空間の表現は、まさにキュビズムの幕開けを実感させる。そして何よりも深く美しい色彩が私の心をとらえて離さなかった。

■フィンセント・ファン・ゴッホ「医師レーの肖像」1889年 64×53cm
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モデルはゴッホが耳切り事件をおこしたときにゴッホを診た医師レー。完成した絵をゴッホは記念にレーに贈った。しかし医師はこの肖像を好まず1900年にヴォラールに売却している。画家のモデルを見透かす視線が鋭い。いくつかの画廊を経て8年後、作品はシチューキンの目にとまり、ロシアに渡ることとなった。シチューキンの慧眼を物語っている。

■ポール・ゴーギャン「エイアハ・オヒパ(働くなかれ)」1896年 65×75cm
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1897年のブリュッセルでの展覧会のために、ゴーギャンがタヒチからパリに送ったもの。1906年にヴォラール画廊にわたり、その後シチューキンが購入、1918年まで所有。プーシキン美術館には1948年に収蔵。

●第4章 20世紀―フォーヴィズム、キュビズム、エコール・ド・パリ

■アンリ・マティス「カラー、アイリス、ミモザ」1913年 145.5×97cm
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1918年までシチューキン邸を飾り、1948年にプーシキン美術館に収蔵。

■パブロ・ピカソ「マジョルカ島の女」1905年頃 厚紙にグアッシュ・水彩 67×51cm
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シチューキンコレクション。

■アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」1909年 131×97cm
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詩人であり批評家であるギョーム・アポリネールと画家のマリー・ローランサンがモデル。ルソーの特徴的な人物像となっている。

■マルク・シャガール「ノクターン」1947年 89.6×72.6cm
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1990年にシャガールとベラの娘イーダがプーシキン美術館に寄贈した作品。ロシア出身のシャガールだが、プーシキン美術館は巨匠やその遺族もコレクションされることを望む有数の美術館である。

この作品はニューヨークで描かれている。ユダヤ人であるシャガールはアメリカ亡命中に最愛の妻ベラを失った。そのことと、故郷のヴィデプスクをナチスに破壊されたことによる心の痛みを赤い色に託して描いている。しかし、破壊を意味する赤のもう一つのイメージは奇蹟。夜の町並みで炎上する赤を花嫁衣裳の白が鎮める。




プーシキン美術館は1912年に「アレクサンドル3世芸術博物館」として開設し、ロシア革命後に、モスクワ出身の国民的詩人であったアレクサンドル・プーシキンの没後100周年を記念して、1937年に「A.S.プーシキン国立造形美術館」に変更されました。

エルミタージュ美術館に次いで世界第二位の所蔵点数約10万点を誇るプーシキン美術館の中から、今回、選りすぐった名品が来ていますが、ほんの一部です。そう考えるとロシアという国は共産主義になる前の帝政ロシア時代に、とてつもない財産を築いていたのですね。


プーシキンの肖像画と蝋人形が掲載されています⇒レーピン大学とイェレメーエフ総長

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この記事へのコメント

dezire
2013年08月14日 19:10
こんにちは。
プーシキン美術館を思い出しながら、展興味ある内容読ませていただきました。
ルノワールやゴーギャン、セザンヌ、ルソー、アングルなどの傑作もよかったですが、私が知らなかった画家の作品も傑作ぞろいで、質の高いコレクションは素晴らしいと思いました。

すべての作品は書ききれませんが、特に子心に残った作品をできるだけ取り上げて作品の感想などを自分なりに書いてみました。
http://desireart.exblog.jp/
読んでいただけるとうれしいです。ご意見などコメントなどをいただける私も勉強になりますので、大変感謝致します。

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