金宗福美術館開館「韓国女流西洋画家の草分け」

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金宗福(キム・ジョンボク、1930~)は韓国の西洋画の具象画壇において女流作家として現在第一人者と言っても過言ではない。

慶尚北道の大邱(テグ)という地方都市で、大邱カトリック大学の前身である曉星(ヒョソン)女子大学の美術の教授を長いこと務め、弟子たちを多く輩出した。

女流画家としての功績が称えられ、今回、大邱カトリック大学の中に「金宗福美術館」が開館した。作品はすべて作家からの寄贈である。

■美術館展示室
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●日本に密航する
第二次大戦直後は日本と韓国の間には国交がなかった。容易に行き来することのできない時代である。

そんなときに、金宗福は油彩画を学ぶために、日本にいる親族を訪ねて密航した。よほど画家になりたいという夢を強く抱いていなければ、とてもそんな行動を為すことはできない。若い頃のそうした情熱と覚悟と行動力が現在の金宗福の名声の土台となっているのは間違いない。

帰国後、大邱を基盤に曉星女子大学の美術の教授として活躍しながら作品制作を続ける。結婚して一男二女を儲けるも離婚。40歳にしてパリにわたって作家活動を続けていく。この女性は、根っからの芸術家である。パリでは当時のル・サロンで金賞を受賞する。

■若い頃の金宗福(美人ですね~)
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■金宗福の家族/右から金宗福・長女(画家鄭明和)・孫娘・長男
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●離散家族
1999年9月に、私は韓国の重鎮作家10名とともに北朝鮮に渡った。まだ金大中と金正日の会談が実現する前だったが、有力者による渉外が実って、38度線にかすかな隙間ができた。芸術の力を感じる出来事である。

このときのメンバーの中に離散家族が2人いた。一人は北に姉を残して避難してきた権玉淵(クォン・オギョン)。もう一人が金宗福である。彼女の姉は、南から北に渡ったいわゆる越北した人物だ。

金宗福はそのことを誰にも明かしてはいなかった。金宗福は現在満83歳になるが、当時も70歳という高齢で肉体的に決して楽ではなかった。しかし北京を経由して平壌に渡るとき、彼女はその表情に深刻な決意のようなものを漂わせていた。

金宗福が離散家族であることは北朝鮮から帰国後だいぶ経って知った。北では姉のことばかりを考え、有力者と思える人物に自らの切実な思いを伝え手紙と大金を渡して頼んだらしい。しかし消息はない。また、北で会った画家や付添いの職員が韓国に公的行事で来た時は、まるで追っかけのように大邱からソウルに出かけた。北のツアーを実現させた有力者も訪ねた。こうして幾度も切実な思いを伝えて頭を下げた。

そんな彼女の努力が天を動かしたのか、何年かしてパリにいる親族を通して姉から手紙が届いた。簡単なことではない。たとえ肉親であっても半世紀以上も手紙のやり取り一つ出来ないのが北朝鮮という国である。いくつもの心情を積み重ねたことでやっと届いた一通の手紙は確かに姉からのものだった。

金宗福は泣いた、手紙を何度も何度も読み返しては、そのたびに泣いた。うれしさと切なさと心配と・・・言葉に出来ない祈りを捧げる。

■美術館職員とともに
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■金宗福とキュレター
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■金宗福展示作品
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■2008年に日本の展示会に出品したグランドキャニオン
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●コリアンフォービズム
金宗福の絵は原色に近いがよく練られたような中間色で、明るく強い色で構成されている。私は彼女の絵を見るとマチスやブラマンクの初期のフォービズムの時代の色遣いを思いおこしてしまう。もちろん金宗福の方がより現代的である。

いつか掲載したいと思うが、パリ時代に描いた風景画がある。その褐色がかった色彩で彩られた街並みを見ると、画面全体が生き生きと息づいている。それは彼女の色遣いの大胆さと力強い線描によるものだ。色彩は洗練されており、それぞれが強い色なのだが見事に響き合っている。

線描には躊躇がない。パリ時代のヌードしかり、後年の作品の山並を縁取る線や山肌や空を走る筆あとは油彩ゆえに見せることのできる闊達さがある。そしてよく見ると、色彩や線描の強さとは裏腹に、女性らしい包容力が前面に出てきて観る者の心をやさしく満たしてくれる。

後年の紫色やイエローやエメラルドグリーンは現代的な明るさを備えた色だ。一時期パリで学んだことも大きいかもしれない。しかし、色も線もどこか東洋的である。彼女の絵は、かつて韓国の水墨画の先人たちが、風景を穏やかな目でとらえてゆったりと描きだしたような大らかさをたたえている。

韓国の陶磁器や木器には「武骨」とも言える素朴さがある。素朴さは作為のない純粋な心を意味する。これが私が金宗福の絵をコリアンフォービズムと呼びたいゆえんだ。

時が経てば経つほど金宗福の画業は、この美術館を中心に多くの人を魅了してゆくだろう。

「韓流ファインアート」韓国の画家たち

権玉淵「望郷の図」老人の涙


■美術館入口に飾られた金宗福使用の筆など
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■倉庫を案内するキュレター
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■大邱市内のホテルからの景観
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