岡野岬石「酒徳と絵徳」絵が人を選ぶ

画家岡野岬石のフェイスブックにご自身に宛てられた手紙(メール)の内容が載っていた。「うまいお酒に出会うのは運がある人で、そういう人を酒徳のある人と呼んでいる」といったことが書かれている。

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岡野フェイスブック記事

手紙自体は、岡野岬石から旨い日本酒を教えてもらったお礼のようなもので「絵も酒も作り手の気合がこもったものに感動がある、云々」と言った内容だったが、妙に納得させられる。

私は下戸ではないもののそれほどの嗜みはない。ただ、お酒よりもプーアル茶を求めて似たような経験はある。プーアル茶はワインと同じように年月による熟成によりその味は千変万化する。日本酒は日本中に無数の酒蔵があり、その個性と旨みを味わいたい人にとってはよい酒との出会いはたまらない悦びに違いない。
プーアル茶のおいしい淹れ方と紫砂壺
プーアル茶のおいしい淹れ方2と「無い味」と「余白」と李禹煥

さて、この「酒徳」なる言葉を見て、すぐさま「絵徳」という言葉が浮かんできた。

「絵徳のある人」はいる。主にコレクターなどの絵にお金をかけ続けてきた人に多いが、いい絵に出会う人、自分の好みにぴったりな絵に出会い手に入れる人は、決してお金がたくさんあるからではない。

●出会いの原因
ある作家の作品を客観視すれば出来のよいものと悪いものはある。いい作家ほどその差は少なくなるのだが・・・。

しかし良い悪いではなく、自分の直観が刺激され「誰がなんと言おうと俺は感動したぞ」と内から湧き上がるような感動をもたらす絵に出会う機会は一般的にはそれほど多くないだろう。
絵画の見方(1)「主観的鑑賞」
絵画の見方(2)「自分のこととして見る」

欲しい絵に対する確固たるイメージを持って銀座を彷徨しようと、馴染みの画商に「この作家のこういったモチーフの絵が欲しい」と頼んでも、ましてやインターネットを漁っても、出会えないものは出会えない。

ではどうしたら出会えるのだろう。やはり「酒徳」と同じように運なのだろうか。

出会いは見えない糸に手繰り寄せられてもたらされる。それはその人物が持っている波動と絵が持っている波動が共鳴して互いに惹き寄せあう現象だ。しかも自分の意識を超えたところの魂の振動と共鳴してこそ感動という次元に至る。

自分の魂が何を考えているのか、どんな波動を持っているのかは常人にはわからない。出会いは運のように見えるけど、目に見えない波動という確かな原因があるのだ。ゆえに、自らの波動を超えたレベルのよい絵には出会うことはない。あるいは出会っても波動が合わず共鳴しないから見過ごしてしまう。

そして真に共鳴する絵に出合う時は、それは人が絵を選んでいるのではなく、逆に「絵が人を選んでいる」。

●ソウルで岡野岬石「富士山」を買った婦人
このブログでも紹介したが、2012年12月にソウルのアートフェアーで岡野岬石の作品を展示した。そこで「富士山」の絵を買った韓国の婦人がいる。その方は60がらみの未亡人で小さな製薬会社を経営していたが、コレクションとして韓国作家の趣味の良い絵をいくつか持っていた。
岡野岬石・韓国アートフェアーART ASIA2012出品

この婦人は一通り全部のブースを見てまわったあとで、岡野の絵が飾ってある当ブースの作品を見渡し、一枚の10号の富士山の絵を何度も距離を変えてみていた。その場を離れようとするのだが、絵によってまた引っ張られる。そんな光景にも見えた。

何が良くてこの富士山を求めたのか婦人は口にしなかった。私が岡野作品の魅力を語りながら、この口数の少ない婦人と交流してみて購入動機らしきものを垣間見ることはできたがここでは省く。

富士山は日本の象徴である。日本人ならば富士山は「霊峰」「日本一」など様々な内的イメージを喚起する。韓国の婦人は日本人が抱くそんなイメージとは無縁だ。ただ絵として岡野の「富士山」に魅了されたのだ。ただ美しかったのだ。そしてこの絵に自分の中の何かが響きあってよろこびを感じた。だからこそ名前も知らない異国の画家の絵に少なくはないお金を投じたのである。

酒も料理もお茶も、それぞれの国の個性があり、それぞれに味わいがあるものだが、それを「気に入る」という時に国境や人種は超越されている。美術品もまたそれらを超える。特に美術品は、その奥底で振動しているモノが「人間」の奥底に息づくモノに等しい。

ともあれ、ソウルの婦人は「絵徳」があったのだ。そして、岡野の絵と同じようにとても心地よい波動を醸していた。

岡野岬石・新印象主義Neo-impressionism「世界それ自体が美しい」
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古美術商と新画商「学びを逸した話」

岡野岬石とセザンヌー存在する物と空間の妙


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この記事へのコメント

岬石
2014年03月01日 22:09
売れて私の手元から離れた絵も、倉庫にしまってある絵も、私が死ねば、消え去ることを含めてその絵自身の運命で世界存在の中を生きてゆきます。いい鑑賞者やコレクターに巡り会えることは、その絵から見ると、幸せな絵の一生を約束されていることでしょう。

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