金寅化アトリエ訪問「山・蓮・ヌード」

1943年生まれの71歳。韓国の画家金寅化(キム・インファ)は山男である。スポーツマンで、マッコリとビールを愛する気持ちのいい男だ。

2014年5月の金寅化のアトリエを紹介したい。

●山岳画家 金寅化KIM IN-HWA
韓国の山はもとより、世界の山山を踏破して絵に描いてきた。キリマンジャロ、エベレスト(ベースキャンプまで)、日本の北アルプス等等。

■キリマンジャロ
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■エベレスト
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金寅化は韓国のソウルに住んでいるが、自宅から車で30分ほど行った京畿道のカピョンにアトリエを構え週に4日足を運ぶ。そして毎週日曜にはどこかの山に登っている。

「自分の妻はクリスチャンだが、クリスチャンたちだって毎週日曜日に礼拝に行くじゃないか。」

金寅化にとって山登りは内面を清めるための神への礼拝に等しいようだ。

山登りを趣味にしていない私が言うのもなんだが、「険しい山道を登るように真剣に自然と交わることの方が、どんな説教が語られる礼拝の場よりもはるかに心身が清まる」はずだ。

神と自然、そして芸術は一つに繋がる。

韓国最大の新聞社朝鮮日報が発刊する月刊誌「山」に、2年連続24か月、金寅化の山の絵が表紙に使われたことがある。

「山は絵の対象でありながら、心を空にする場所」

山の雑誌でプロの登山家と対談したときに金寅化はそう語った。

■雑誌「山」の対談が載った記事
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今から15年も前の話だが、長野の展示会で金寅化の山の絵の前から離れられなくなったコレクターの婦人がいた。

その婦人の言葉「べつにさもない山の絵なんだけど、不思議に惹かれてしまう」

この言葉が示すように、金寅化は特に優れた技術や強烈な個性を持った画家とは言いがたい。しかしその画面はとても素直かつ澄んでいる。

山の絵の下の方に配された抽象的な「赤い三角形」は近年の彼の絵によく登場する。「山の気を表したい」という一念が生み出した色彩と造形である。

一見するところ私にはその赤い三角形がない方がいいと思えるのだが、いつも山のエネルギーを実感している者としてどうしても描き入れたかったようだ。観る方が作家の意図を尋ねて観れば必ず目と心になじんでくるだろう。

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●清浄な蓮

金寅化の絵のモチーフには「蓮」も多い。
東洋陶磁美術館「蓮HASU展」―蓮があらわすもの
朝鮮民画(10)「花鳥図ー蓮華図」

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「蓮は泥沼の中に美しい花を咲かせる。世の中が泥のように汚れていたとしても、その中で清浄な心を保って生きていきなさい」という釈迦の教えを作画の動機としている。

また、金寅化の描く蓮には、常にリアルな水滴が描かれる。「水滴は汚い水と交わらない。そして新しく生まれ変わるという意味を込めて描きました。」

彼の蓮の絵を飾った家に住む人は、一日を終えて家に戻れば、心にこびりついた泥が絵によって洗い流され、次の朝には、生まれ変わったような新たな気持ちで出発できるに違いない。毎日。

●ヌード

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金寅化はソウルの文化センターで主婦たちに絵を教えている。その中にヌードクロッキーの時間がある。ヌードモデルが様々なポーズをとって、それを鉛筆で素早く描くのである。

金寅化も生徒と一緒にヌードを描く。そのヌードクロッキーに水彩で色をつけたものが、彼のアトリエにいくつも飾られている。

どんなに上手い画家でもそうだが、画家は普段常に何かを描いていなければ思うような描写や表現はできない。対象を愛する目で見つめて描き続けることで、対象に宿された霊的なエネルギーまでもが描線に反映されてゆく。

女性のヌードにはこの世の中で最もやわらかで美しい線が宿されている、と私は思う。男性にとってそれは性的な興奮を呼ぶものである以前に、見ていて無条件にただ美しい存在。誰が創ったかわからんが、よくぞ造ったものである。

「えっ、神様がつくった!?」

ならば、礼拝よりも、神が創造した美しい自然と真剣に交わることの方が、自らを清める聖なる場となるかもしれない。

ルノワール「裸婦(ヌード)」北漢山のチンダルレ


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【このブログで紹介した現代韓国作家たち】
●巨匠作家
金昌烈(キム・チャンギョル)
徐世鈺(ソ・セオク)
朴栖甫(パク・ソボ)
権玉淵(クォン・オギョン)
閔庚甲(ミン・ギョンカプ)
朴敦(パク・ドン)
河鍾賢(ハ・ジョンヒョン)
李満益(イ・マニック)
「愛の舞踏」徐世鈺からの物語
金宗福(キム・ジョンボク)

絵画の真贋鑑定―朴壽根(パク・スグン)
平山郁夫・金興洙二人展回想ーKIM SOU死去

●中堅作家
金鳳台(キム・ボンテ)
金守益(キム・スーイク)
李重煕(イ・ジュンヒ)
李康逸(イ・ガンイル)
車一萬(チャ・イルマン)
車一萬・亜州美術館個展「上善は水の如し」
朴芳永(パク・バンヨン)評論シンパラム
金敬烈(キム・ギョンヨル)
李斗植(イー・ドゥシク)韓国美術協会葬
李淑子(イー・スッチャ)「麦畑と裸婦」
●若手作家
田奉烈(チョン・ボンヨル)
●北朝鮮作家
鄭永万(チョン・ヨンマン)


権玉淵「望郷の図」老人の涙
閔庚甲「ソウル市立美術館個展」

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