チューリヒ美術館展ダイジェスト「濃密な美術史」

チューリヒはスイス最大の都市である。中世から現代までの美術作品を10万点以上収蔵するチューリヒ美術館。その中から19世紀末より20世紀前半に焦点を当てた企画展「チューリヒ美術館展-印象派からシュルレアリスムまで」は、まさに珠玉のコレクション展と言ってもよいだろう。

《国立新美術館 2014年9月25日~12月15日》
《神戸市立美術館 2015年1月31日~5月10日》

1.セガンティーニ、2.モネ、3.ポスト印象派、4.ホドラー、5.ナビ派、6.ムンク、7.表現主義、8.ココシュカ、9.フォービズムとキュビズム、10.クレー、11.抽象絵画、12.シャガール、13.シュルレアリスム、14.ジャコメッティ、という14章で構成されているが、ここにそれをダイジェストで紹介する。

1)セガンティーニ
セガンティーニはスイス・アルプスにアトリエを構えた。短い線を純色で描く「分割主義」という独自の描法で描き続けたが、その画面はどこか神秘的である。

■ジョヴアンニ・セガンティーニ「虚栄(ヴェニスタ)」1897年 77×124cm
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作品「虚栄」に対するセガンティーニ自身の言葉を抜粋して紹介する。

「泉の水面に映った全裸の自分の姿を見つめている、汚れを知らないうら若い乙女の姿を通して虚栄と欺瞞を描いた作品です。深い泉の水面には黒い岩と青い空が映っています。昼であるのと同時に夜でもありますし、また人生の喜びと苦しみを描いたものでもあります。欺瞞は岩の黒い影に隠れているぬめぬめした身体で目をぎらつかせている怪物として描きました。私はアルプス山中の春に特有の魔術的な静寂がこの画面を支配するようにしました。」

画面中央上方に森から出てくる白い人物、右上方には輪舞する白い人々が見える。
セガンティーニ「母子-絵を読み解く」


2)モネ
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2m×6mの大作の「睡蓮の池、夕暮れ」が圧巻。自在な筆使いと大胆かつ緻密な構成で描いている。実物を会場で見られよ。印象派の醍醐味を余すことなく味わえる。

このコーナーではロダンの彫刻とドガが一緒に展示されている。

■クロード・モネ「国会議事堂、日没」1904年 81×92
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3)ポスト印象派
後期印象派とも呼ばれている。ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌなどが展示されているがゴッホ晩年円熟期の風景画を掲載する。

■フィンセント・ファン・ゴッホ「サント=マリーの白い小屋」1888年 33.5×41.5
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フィンセント・ファン・ゴッホ「種をまく人」

画家の箴言名言(9)ゴッホ「燃える魂の声に従った人生」


私の好きなルソーがこの括りに入っていた。印象派とは様式が違う画家たちを見ると白樺派が訳した「後期印象派」という言葉は紛らわしい。ポストは「~の後」という意味だが、印象派を受け継いだものだけではなく、一方ではそれに反対して独自の画風を展開したものまでが含まれる。

■アンリ・ルソー「X氏の肖像(ピエール・ロティ)」
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4)ホドラー
私にとって馴染みは薄かったが、大作の存在感に圧倒された。国立西洋美術館でホドラー展が開催されており、近年再評価されているようだ。

■フェルディナント・ホドラー「遠方からの歌」1917年頃 180×129
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5)ナビ派
ナビはヘブライ語で「預言者」を意味する。フェリックス・ヴァロットンが4点展示されているが、私はボナールの精神の深奥まで響いてくるような深くもきらめく色彩に魅了された。

■ピエール・ボナール「ブラック」あるいは「犬と一緒にいる女性」1907年 62×70
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6)ムンク
ムンクのまとまったコレクションを持つチューリヒ美術館から4点を展示。人物こそがムンクの特徴をよく表しているのだが、この暗い冬の風景画が妙に気になった。もしかして私はネクラなのかもしれない。

■エドヴァルド・ムンク「冬の夜」1900年 81×121
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7)表現主義
ドイツの画家であるベックマンが描く人物像に惹きつけられた。快活で即興的な筆の運びで描かれており、特徴的な顔の圧倒的な存在感は尋常ではなかった。内面までも伝わってくる。

■マックス・ベックマン「マックス・レーガーの肖像」1917年 100×70.5
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8)ココシュカ
チューリヒ美術館はココシュカの豊かなコレクションを誇る。晩年をスイスで過ごしたオーストリア出身の画家ココシュカ。人物と風景の2枚を紹介したい。

■オスカー・ココシュカ「アデル・アステアの肖像」1926年 97×130.5
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彼女の目はいったいどこを見ているのか。

■オスカー・ココシュカ「モンタナの風景」1947年 90×120
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光と空気が踊りながら輝いている。なんとも美しい色彩である。きっと画家は終戦の安堵とともにヨーロッパの復興の予兆をうれしく感じていたに違いない。


9)フォービズムとキュビズム
マティス、ブラマンク、ブラック、ピカソの中からマティスの風景画とピカソの綜合的キュビズムの静物画。二つとも見てるとウキウキしてくる絵だ。

■アンリ・マティス「バルビゾン」1908年 73×60
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画家の箴言名言(2)アンリ・マティス「デッサン・精神的光」

■パブロ・ピカソ「ギター、グラス、果物鉢」1924年 97.5×130.5
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画家の箴言名言(6)パブロ・ピカソ「虚構の中の真実」
パブロ・ピカソ「キュビズム」と作品の変遷

10)クレー
クレーはスイスを代表する画家である。画家の箴言名言(4)パウル・クレー「嘘の無い絵画」

■パウル・クレー「狩人の木のもとで」1939年 100×80
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11)抽象絵画
カンディンスキー、ヨハネス・イッテン、アウグスト・ジャコメッティ、モンドリアン、レジェの中からスイス出身のアウグスト・ジャコメッティの作品を紹介する。

■アウグスト・ジャコメッティ「色彩のファンタジー」1914年 99.5×99.5
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12)シャガール
チューリヒ市の中央にそびえるフラウミュンスター(聖母教会)のためにシャガールはステンドグラスを制作した。

ここに掲載した作品は、シャガールの故郷ヴィテブスクへの思いが漂う一点。不思議な郷愁を誘う。

■マルク・シャガール「ヴィテブスクの上で」1922年 73×91
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13)シュルレアリスム
キリコ、エルンスト、ミロ、タンギー、ダリ、マグリットの中から詩情あふれる静寂のマグリットをどうぞ。シュルレアリスム展

■ルネ・マグリット「9月16日」1956年 60×50.3
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14)ジャコメッティ
スイス出身。チューリヒ美術館はジャコメッティ財団の寄託を受けて、数多くの作品を所蔵している。5点の彫刻と1点の油彩が展示されていた。

■アルベルト・ジャコメッティ「スプーン型の女」1926年 144×51×23
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■アルベルト・ジャコメッティ「広場を横切る男」1949年 63×80×52
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チューリヒ美術館展には新鮮な感動があります。おすすめです。

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