宮芳平「無心に清浄なる花を咲かせた画家」

2014年12月21日アンコール放映の日曜美術館「花のように描き続ける~画家・宮芳平~」ではじめて宮芳平(みや よしへい1893-1971)のことを詳しく知った。

生誕120年で美術館展示も行われたようだが私は見ていない。実物にはかなわないが、TVがデジタル化されたことにより詳細かつ美しい画面から作品の魅力が十分伝わってくる。日曜美術館で紹介された作品には、自然の息吹と作家の魂の呼吸が息づいていた。

■宮芳平「ゴルゴダ」1970年作
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長野県で高校教師をしながら画業を重ねてきた宮芳平。若い頃、「絵を教えることと描くこと、そのどちらも全力を尽くしてなすもの。ゆえにこの二つは一つにはなれない」と思っていた彼が、後年になって「この二つは一つのようだ」と実感してゆく。

中央画壇や画商からたいして注目も受けず、教師と画家を真摯に生きてきた人生だった。貧困そして妻が肺病を患い看病の甲斐もなく40代で逝くなどの苦難もあった。

宮の画業が陽の目を見たのは死後のことだったが、注目されなかったことが彼を歴史的な画家にしたのだと私は思う。

■宮芳平「椿」1914年作
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■宮芳平「椿」部分
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●文豪森鴎外を訪ねる
東京美術学校在学中に唯一の理解者父親が死去。返済のあてもない借金をして高価な絵の具をそろえ、まさに乾坤一擲のおもいで描いた作品「椿」が文展で落選する。その理由を知りたくて審査主任の森鴎外をアポなしで訪問した。

その時の様子を森鴎外は自らの短編小説「天寵(てんちょう)」に書いている。

宮芳平が、なぜ自分の絵が格に合わないのかと尋ねるのに対して、森鴎外は、彼の作品が大衆や大家におもねていないことを評価しながらも入選には不足であったことを諭した。そして宮の作品が「奇態」と周りから揶揄されていることに対して、毛虫は奇態だが、それはやがて美しい蝶になると希望を与えた。

小説のどこまでが実際のやりとりかはわからないが、森鴎外との交流は大きい。おそらくこの画家の生涯にわたって目に見えない影響を与えたに違いない。

偉大な芸術家との出会いはそれだけで何かを得る機会なのだから。

■宮芳平「エフタとその娘」1970年作
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●純粋なる生き様が生み出す美
冒頭に掲載した晩年の作品「ゴルゴダ」を見るとルオーを想起させるが、宮の絵はルオーの描き方には似ていない。極端に言えば「椿」に見る点描の延長的な描き方だ。またルオーは剛、宮は柔である。

ではなぜルオーを思わせるかと言えば、キリストという題材に対する作家の情的世界が似ているのではないかと予測する。そして二人とも画面から純粋さが伝わってくる。
ジョルジュ・ルオー「受難の道にさす光」

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宮が60歳を過ぎてから傾倒したキリスト教。1966年には聖地巡礼を果たしている。磔刑図の造形からは対象であるキリストに対する深い哀れみが感じられ、画面に現れる色彩の響きにも優しさとどこか正直で純真なものを感じる。

芸術作品というものは嘘をつけない。

画商は、より売れるためのアドバイスを画家にすることは往々にしてある。大衆の好みを知っているからだ。

しかし、無心で打算のない宮芳平が描く作品は、「大衆」や「画商」などの絵を買ってくれるあるいは売ってくれる相手、また展覧会の「審査員」などの美術の専門家に阿ていない。

芸術作品は見るものに媚びへつらう必要はない。しかし現代社会においては、人気作家になってゆくと我知らずそうした絵を描いてしまうことがある。人気作家は芸術とのバランスを取ろうとするがその作品はどこかお金の匂いがすることがある。

公募展もまたしかり。審査員の目を引くポイントを心得ている出品者は多いのではなかろうか。

宮芳平はそうしたものと無縁に過ごせた。ゆえに、宮芳平の絵を前にする我々の心を震わしてくれるのだ。

彼は生前画壇の評価を得ずとも歴史に名をとどめた。それは、芸術に対するどこまでも真摯な姿勢を貫いた自らの生き様に、画家としての幸せを見出していたからなのだと思う。

番組では宮芳平が美術の教育者として語っていた「養拙」という言葉を紹介していた。「拙さを養う」つまり幼な子のような純粋さを失わず自分の内に抱き続けるということだろう。まさに宮芳平の画業と生き様をあらわしている。

それはピカソが憧れた境地でもある。天才画家ピカソ「無垢へのあこがれ」


■宮芳平「黒い太陽(絶筆)」1967~71年作
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■宮芳平「野の花」(部分)1956年作
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■宮芳平「自画像」1914年作
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