「モネに取って代れるか」車一萬・中国絵画市場への挑戦

下に掲載した絵は韓国の画家・車一萬(チャー・イルマン)が蘇州にある双橋という場所を描いた150号の絵だが、二ヶ月近く前に訪問したときは描き始めだった。

私は中国の蘇州には2度訪ねたことがある。

水の都、東洋のベニスとも言われるが、残念ながらベニスには行ったことがないのでその比較はできない。

ただ、蘇州には同じ東洋人にとってどこか懐かしい情緒がある。

■車一萬「蘇州双橋」150号 未完成
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車一萬は2月に蘇州のギャラリーに招待されていて、芸術イベントでのスピーチを頼まれているという。

見識の深い画家なので中国の文化人たちにとっても興味深い話をするだろう。そしてギャラリーで展示するため、この蘇州の旅情が漂う絵のような大作を中心に20点以上キャンバスを丸めて持っていくそうだ。


●中国進出の内的動機
ここ数年、車一萬は中国進出を何人かの人を介して試みてきた。最初は縁あって始め、北京にアトリエを構え、青島に絵を送り・・・。しかし、ビジネスパートナーにあまり恵まれなかったこともあってか成功していない。

今回の蘇州のギャラリーとの交流は3度目の正直である。

車一萬が画家として中国に進出しようという動機は、外的には巨大な市場を求めたビジネスだ。

ただし、韓国からたくさんのギャラリーが中国に進出して、結局うまくいかず撤退していることは彼も知っている。しかも外国人の絵は投機的な対象となる一部の作家のもの以外はほとんど流通していないことも。

人によっては彼をまるでドン・キホーテのように見るだろう。

それでも彼が中国を目指すのには、現代中国美術の実情を知ったことで心に期すものがあるからだ。

車一萬は「現代中国の人気作家の油彩画はたいした技術がなく深みもない。自分の絵のように、筆力があり、自然を美しく描写し、清浄なエネルギーを見る者に与える絵が中国に必要だ」と語る。手前味噌かつ思い込みのような動機だが、よく言えば使命感のようなものだ。

中国の現代絵画を見ると不気味な人物を描いた作品が実に多く人気もある。こうした背景は簡単に特定できないが、共産主義の抑圧から解放されていく過程で人々の情緒が乱れてきた反映のようにも感じる。芸術は時代の気運を写し取るのだ。

1966年~77年までの中国の文化大革命では、高い見識を持った文化人が粛清されたり、画家が田舎で労働を強いられたりと、中国国民は大きな混乱を味わった。

■中国の現代絵画(2007年北京宋床の美術館で撮影、各100号くらい)
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ところで、絵画は他の商売と同じで「商品(絵)がよければ売れる」という単純なものではない。

それを知りながらも、車一萬は「自分の絵は中国に必要だ」、そして「受け入れてくれる人々がいる」と信じて前進している。なんの保証もなく。

■車一萬 蘇州周辺を描いた風景画
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●中国で車一萬芸術はお買い得か
車一萬は、光と水を描かせたら国内では右に出るものが居ないと言っても過言ではない。

もちろん写真のように描く写実主義の画家たちとは一線を画す。たとえば掲載した絵のように、静かな水面に穏やかな光が反映し、空気の湿度まで描き出している風景画は、見る者の心に落ち着いた情緒をもたらす。

彼は油彩画の技術と芸術性において一定レベル以上の力がある。またモネやゴッホつまり印象派やポスト印象派から影響を受け、それを現代的に昇華した自分独自の画風を築いている。特に夜景は独特である。

中国のギャラリーも車一萬を紹介するときにモネを引き合いにしている。彼の絵に印象派の影響を見て取るからなのだろう。

モネは自然の光を描写する歴史的な第一人者だ。その芸術性は高い。モネは印象派という美術史上の革新的な運動を牽引した作家ゆえに、市場価値は極めて高い。内容にもよるが小品でも日本円にして億単位である。

現在モネの絵の多くは世界中の美術館に収蔵され、流通市場に出てくる作品の価値は上がりこそすれ落ちることはない。ゆえに財産性が高い。
絵画の価値(1)「インテリア性」
絵画の価値(2)「財産性・投機性」

だからと言って、モネを買って家に飾れるだろうか?多少お金があっても難しい。もしもモネを飾るにふさわしい家と十分なお金があるとしても、それ以前に美術市場で自分の好みに合うモネの絵に出会うのは簡単ではない。

一方、車一萬のように、印象派の流れを引き継ぎながら現代的な描き方をしている作家の作品があって、自分の好みの絵に出会うのは比較的容易い。そしてそれを飾ろうと思ったとき、その価格はモネの1000分の1だ。

価格の1000倍の差は必ずしも芸術性の差にはなってはいないように思う。

年に何度か美術館に足を運んで見る10億円のモネよりも、自分の部屋に飾られた100万円の車一萬の方が、手元にある分、多くのよろこびを与えてくれるに違いない。

これは比較できないものをあえて比較をしてみたのである。

車一萬の絵はモネという芸術性とブランドとその財産性を持つよろこびには取って代わることはできない。

ただ、生活の中で光と水を描写した絵によって芸術的なよろこびを味わいたいというのであれば、車一萬の絵は十分にその力を発揮する。


そのうち車一萬の絵もよいものはなかなか手に入らないという時が来るかも知れない。

彼はモネの亜流としてではなく画家車一萬としての勝負を中国に仕掛けている。一見無謀に見える挑戦だが、活躍を期待したい。


車一萬・亜州美術館個展「上善は水の如し」
見立ての現代アート「原爆ドーム」

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