宋栄邦「五彩墨香」韓国国立現代美術館個展

韓国の国立現代美術館は、ナムジュン・パイクの巨大なビデオアートの塔が室内中央に常設された韓国最大の美術館である。イーウファンのモノ派時代の作品をはじめ国内作家の所蔵作品は質量ともに充実している。

そこの企画展示場で水墨画家、宋栄邦(ソン・ヨンバン1936年~)の個展が2015年3月31日から6月28日まで開催されている。

■自画像(2015年作)と並ぶ宋栄邦
画像

画像


※掲載する作品写真は図録がまだ出来ておらずスマートフォンで撮った画像である

●流行と無縁な水墨
水墨画は、現代の日本や韓国の美術市場において人気がない。時代の趨勢だろう。水墨画を極めようとする才能のある若い作家が見当たらない。`そうした意味で宋栄邦は「最後の水墨画家」の一人と言える。

その宋栄邦も1960年代後半に韓国にアンフォルメル運動が吹き荒れるや水墨で抽象画を描いた。

■宋栄邦「韻」
画像


しかし、抽象は自分の体質に合わないと自覚し、すぐに具象に戻る。

●気韻生動
具象と言っても、もともと水墨画には、描こうとする対象の形を正確に写し出す「写形」と、それに対して対象から作家の内面に感じ取ったものを表す「写意」というものがあり、拡大してゆけば抽象的な概念との接点はある。

水墨画は、たとえば霞などの空気を描くときには、墨の濃淡や線描で存在感や動きを表わす。画家は運筆の技術を駆使して山や木々や花などを絵に描くのだが、作家が意識するのは事物に宿された生命力だ。描き出された作品には作家の内面の要素が加わり気品や格調そして生命力となって現れる。

南宋の画家で評論家だった謝赫(しゃかく)の「古画品録」の画論「画の六法」に記されている「気韻生動」がそれである。

中国宋代の画家たちを一つの頂点として、日本でも、雪舟や大雅や応挙や若冲や蕪村や狩野派の画家たちは、すべてこの「気韻生動」が高いレベルで作品に現れてこその大家だ。
天才絵師「若冲と蕪村」光琳没後生誕300年

また、現代美術「抽象表現主義」の草分け的存在であるジャクソン・ポロックが影響を受けたに違いないのが東洋の水墨画である。彼もまた気韻生動という言葉は分かっておらずとも表現にあたってそれを目指したのではないだろうか。

■宋栄邦「浄土」1970年作
画像

■宋栄邦
画像


●五彩墨香
宋栄邦は、水墨で、山水・花鳥・風景・肖像画などをこなす。

彼の作品はエネルギーに満ちた表現というよりは、独特の気品とおっとりした味わいを醸して、見る者の心を抱擁する。

宋栄邦は、個展のタイトルにもなっている「五彩墨香」をよく為す。墨の五彩とは乾・湿・濃・淡・焦の五つで、焦(しょう)は真黒のことである。

横山大観は「観者が作者の意に触れると五彩が燦然と輝いて見える」と語っている。ここで「作家の意に触れる」ということは、決して知的な作業によるものだけではなく、むしろ情的で感覚的なものと私は理解している。

なぜなら画の味わいは知的な理屈を超えたところにあるからだ。

■宋栄邦「梅図」八曲屏風 二隻
画像

■宋栄邦「梅図」部分(青梅と紅梅)
画像

■宋栄邦「紅梅」
画像


梅の「意」は「冬を乗り超えて花を咲かせる。ゆえに高貴な人格の香りを放つ。梅は君子の花」ということだ。

水墨画においては淡彩と呼ばれる色を使うが、基本的に墨絵は白と黒とその中間の世界である。

墨の黒はあらゆる色を包含している。そうした思想から墨色は最も高貴な色とみなされた。

それは質素さを重んじる儒教の教えにも通じ、儒教を国教とした朝鮮時代の正統画はほとんど水墨画だ。その対極に朝鮮民画というものがある。朝鮮民画(1)「民画とは」

水墨の高度な技術をもって描き出された五彩は見るほどに味わいが増してくる。

特に宋栄邦が描く古木の梅の枝は、連綿と続く紆余曲折の人生を思わせる。筆の運びに心を合わせて濃淡乾湿の妙を観れば、そこはかとないよろこびを感じてやまない。

■宋栄邦「普賢菩薩図」1999年作 東国大学校所蔵
画像


宋栄邦は仏教系の大学である東国大学美術大学の教授と学長を務めた経歴がある。各作品サイズが203×310cmの普賢菩薩図と文殊菩薩図が今回の展示で最も大きな作品だ。

韓国の歴史的な美術品で世界的に評価が高いのが高麗仏画だが、宋栄邦はその技法を研究し、絹本で肖像画もこなす。

●水墨画の復権
展示は作家が得意とする「風景」「仏像」「梅」「蓮」などの各コーナーに分かれているが、今回の展示全体を見渡して最も新鮮な感動を受けた一つがこの絵である。

■宋栄邦「蓮」2015年作
画像


本年の作である。伝統の中に新しさを感じさせる。これは難しいチャレンジであると思う。しかし、このチャレンジは人気が落ちた水墨画の復権には不可欠であろう。

宋栄邦はこう語る
「現代美術もいい。しかし皆が新しいものを求めて、古いものを学んで新たに極めようとする者がいなくなれば、それは美術界の発展につながらない。」

■宋栄邦「画帳」
画像

■宋栄邦「蓮」
画像

■宋栄邦
画像


作家と一緒に観覧したおかげで、スマートフォンで写真を撮らせていただくことができた。普通はダメヨ~、ダメダメ。 いいじゃないの~(古い!!)となるのだが。

■個展入口で
画像


画家はまたこんなことを言った。
「つたない絵で恥ずかしい」


「韓流ファインアート」韓国の画家たち

プーアル茶のおいしい淹れ方2と「無い味」と「余白」と李禹煥



よろしければポチっと⇒人気ブログランキングへ
オマケにもひとつ⇒にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑
賞・評論へ
にほんブログ村
ついでにクリック⇒ブログ王

「わくわくアート情報/絵画の見方・買い方」
ブログトップページへ

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 6

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
ナイス ナイス ナイス
かわいい

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック