ベニー・アンダーソン「天井画」②


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天井画のタイトルは「神性の光の清らかな浸透」です

一昨年(2019年)秋に日本のある建物の天井画のプロジェクトを立ち上げ、アメリカ在住のベニー・アンダーソン画伯に正式な制作依頼をしたのが昨年(2020年)7月のことです。その半年後の12月にこの天井画(200×530cm)×2点が完成し、ようやく日本に到着したのは今年(2021年)1月の初めでした。

天井画②横.png

天井画① 横.png


一昨年、展示会の招待作家としてベニー・アンダーソンが来日した際、建物の下見をしています。床から7mあまり上にある天井には、もともと音響をよくするために細長い長方形の窪みが対になって並んでおり、それはまるで天井画を飾るためにあるような空間でした。


日本からの発注後に、ベニー・アンダーソンが下絵からはじめて天井画として描き上げるまでに要した期間は約5か月です。


彼の制作スタイルは、構想段階で受けたインスピレーションをもとに描きすすめていきます。そのインスピレーションとは、眉間のあたりにある第三の目に具体的なイメージが現れる(見える)という特異なものです。


先回、天井画の①を画像と解説付きで紹介しました。


今回は、天井画②の画像を中心に掲載します
◇天井画②
天井画②縦.png


●父性と母性

※実物作品は200×177cmを3枚つなげて200×530cmの一枚の絵画になります。ここに掲載した全体画像は3点別々に撮ったものをつなげていますので、(特に下の天井画①は)境目で色が変わって見えますが、実際は境目が目立たず自然につながってきれいに見えます。

◇天井画①

   天井画①縦.png   
以前の記事に貼った画像を見ていただければよくわかりますが、この天井画①を見ると、爆発する光に圧倒されます。ここには「父性」あるいは「男性的」な性質を見て取れます。それに対して天井画②は「母性」あるいは「女性的」です。

①が深遠な闇に「動的」な光が広がっているのに対して、②は「静的」な画面で、全体が明るい光に覆われています。①が「夜」、②は「昼」のイメージです。


この陽(陰)と陰(陽)の対照的な二つの絵画が天井に飾られた時、中央部分の光と雲の輪が並ぶことで、二つの絵画が一対であることが強く感じられます。


●天井画②の三つの各パーツ

◇幻想的な風景と肖像画
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実はこの風景の中の白衣のローブを纏った人物は、作品を依頼した方(寄進者)のご両親です(父親は故人)。


この天井画が飾られる建物はキリスト教系団体の聖堂です。中世のカトリック教会において、祭壇画などを信徒がお金を出して寄進する際、その中に寄進者の肖像画を描き入れてきた歴史がありました。

例えば、かの有名な「ヘントの祭壇画(15世紀、ヤン・ファン・エイク作)」では、祭壇画が閉じられている状態では裏側が見えますが、そこに、手を合わせて祈る寄進者夫妻が両端の下側に描かれています。

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今回のベニーの天井画を制作するにあたって、依頼者(寄進者)が自分ではなくご両親の肖像を希望しました。


◇鋭峻な「山」と清澄な「滝」
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上のパーツの白い宮殿、そしてこのパーツに描かれているような険しい山々や滝は、ベニー作品の中にたびたび登場します。これも彼の第三の目に映し出された事物なのでしょう。

鋭く天を突く険しい山は穏やかな色調の風景の中に緊張感をもたらします。その中腹から糸を引くように静かに落ちる滝は神秘そのものです。


◇富士山と桜
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富士山とその左右から花をつけた桜の枝。富士も桜も日本の象徴です。ベニー・アンダーソンは以前に依頼者の家を訪問したことがあり、その家には、依頼者の父親が植えた二本の桜の木があります。



●描かれた天使たち


天井画①にも②にも、よく見ると、光と雲の輪の中央から無数の天使たちが秩序正しく並ぶように描かれています。


「天使の画家」と謳われたベニー・アンダーソンの面目躍如です。

彼は幼いころから聖書の挿絵に興味を抱いてよく見ていたと言います。それが画家ベニー・アンダーソンの原点です。

◇少年ベニーが親しんだ挿絵入り聖書
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天使はキリスト教文化圏では身近なものですが、たとえば正教の聖画イコンには、悪魔の象徴である竜を槍で退治する大天使ミカエルの図がよく描かれました。

ルネッサンス以降のカトリックの聖画においては、あのダ・ヴィンチやボッティチェリなどの巨匠たちも皆描いた「受胎告知」が有名で、そこに登場するのは大天使ガブリエルです。

他によく見受けられるのは「森永エンゼル」のように裸の子供に羽根が生えた姿です。

◇「受胎告知」エル・グレコ(16世紀)
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彼らが描く天使はまるで実在する人間のようにとてもリアルです。


キリスト教も仏教も、目に見えない霊的な存在を可視化させようと絵に描き、彫刻に刻みました。


人々はこの世の苦しみから逃れようと、さらには願い事を叶えたくて、あるいは生かされていることに感謝して、「わが思いよ、神仏に届け」とばかりに、聖画や仏像に向かって祈りを捧げてきました。それらは超越的な存在との媒介物なのです。

人間は目に見えないものが視覚化されることで安心感をおぼえるものです。それが絵画の役割の一つでもあります。


●天使の役割

キリスト教絵画の天使たちは、神の創造の協助者、そして神のメッセンジャー等の役目を担っています。

「ベニー・アンダーソンが描く天使たちにも神聖な使命が付与されているにちがいない」と私は勝手に想っているのです。天井画①に描かれている名前のついた天使だけでなく、光の中から湧き出ているような無数の名もない天使たちにもです。


さて、この天使たちは、絵の中にただ鎮座し、光の輪の中で隊列を組んで、見る者の目をよろこばせているだけではないはずです。彼らにすれば、絵の中から抜け出してそれぞれが役目を果たさなければ気が済まないのです。


絵の中の天使たちは、天井から降り注がれる清浄な霊気に紛れて音もなく降りてくるでしょう。何のために・・・あなたを助けるためにです。

そして、心にこうささやきかけます。


「あなたはどう生きるのですか?・・・」



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