韓国現代アートの巨匠・金昌烈(キム・チャンギョル)「望郷の図」

2008年6月7日のことです。この日の午後に金昌烈画伯のソウルのアトリエをひさびさ訪問しました。

たしかその前に会ったのは2006年の夏、サッカー・ワールドカップのテレビ観戦中に訪ね、しばし私も一緒にテレビを見ていた記憶があります。

ゲームの成り行きを静かに見守るその姿はまるで寡黙な道人のようでした。

金昌烈は毎年5月から7月にかけてパリからソウルに戻られて過ごされます。この年は5月にソウルに来られてすぐに風邪でしばらく寝込んでいました。

9月~11月はパリの画廊で大作を中心とした個展を開催予定。同時に10月のパリでのアートフェアーFIACでのポンピドー・ブースは金昌烈です。つまり大忙し。

通常アートフェアーには画廊がブースを出店しますが、このブースだけはポンピドーセンターの基金に寄付される特別販売、ちなみに前年のポンピドー・ブースは「ザオ・ウーキー」とか。

写真の絵は韓紙に墨を使った作品で、キャンバスの横にサインをしておらず裏面にサインがあります。もちろんそれだけで十分なのですが、この日はお客様の依頼で横にサインをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。

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この作品はキャンバスに貼った韓紙に千字文を墨で幾度も幾度も書き重ねたもので、それは皆さんも習字の時間に新聞紙に何度も練習したことのあるアレです。

ただ金昌烈先生のそれは皆さんのアレと違って美術として昇華されたアレなのです。そしてその上にアクリル絵の具で水滴を描いています。

「この作品は時間がかかるんですよ」とは作家の弁。芸術には労働価値説は通用しませんが、他の千字文作品に比べて作家の手によって塗り込められた心情度数は高いと言えます。

金昌烈は北朝鮮の出身です。朝鮮戦争の前に韓国に逃げのびて来ました。

画面に千字文を描いた作品は「回帰」というタイトルが付けられており、この回帰シリーズは、故郷北朝鮮への望郷の思いが込められています。

金昌烈は3~4歳頃からその幼い小さな手に筆を握り、祖父の深い愛情を一身に受けながら墨で千字文を書き続けました。

あれから半世紀あまりが過ぎ、さらに80歳を越えた今でも祖父から教わった千字文を絵の中に描くことで、故郷、即ち幼い頃に受けた祖父の愛の懐に「回帰」しているのです。

帰りたくても帰れない閉ざされた故郷。だからこそ切ないほどに慕わしくて・・・しかし肉体を伴わない想念の回帰はむしろ恍惚としたよろこびに導かれるのでしょう。それは美しいものを描くという行為の力がもたらすものです。

墨文字で重ねられた千字文からこぼれ出るように描かれた一滴の水滴。それは闇に放たれた光を孕んで静かに輝いています。まるで悲しみや恨みの一切を浄化してくれるかのように。

この水滴は、故郷を離れ、ソウル・ニューヨーク・パリを彷徨いながら、自らの運命に抗わず、信念に従って寡黙に生きてきた作家の生き様から産み落とされた希望の象徴です。

そしてそれは心情にこぼれ落ちた涙なのかもしれません。

権玉淵「望郷の図」老人の涙
韓流ファインアート

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