版画の買い方(2)「版画の種類(技法)」

先回の版画の基本知識(1)「オリジナルとエスタンプ」の続きです。版画の技法とその実例をお伝えします。



筆者は自分で本格的な版画を制作したことがないので説明には限界がありますが、版画を購入するにあたって一般的に知っておいた方がよい内容です。


①木版画(凸版)

棟方志功が代表的な作家です。志功は自分の木版画を「板画」と呼び、自分で絵を描き(自画)、版を彫り(自刻)、刷ります(自刷)。そのうえ「手彩色」まで施しています。手彩色とは版画が刷り上がったあとに絵の具で彩色することです。


浮世絵もまた木版画です。


※棟方志功・木版画「釈迦十大弟子須菩堤の柵」

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※棟方志功・木版画「美神誕生の柵」

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棟方志功の版画として市場に出ているものの中で、作家の肉筆画を原画にしてリトグラフ(エスタンプ)をつくり、それに著作権管理者の印が押されたものがあります。


棟方志功のオリジナルの直筆サイン入りの版画はよいもので数百万の値が付きます。上記のエスタンプは人気(需要)をにらんで作家の死後に作られたものです。作家が全く監修していないノーサインのエスタンプですので美術品としての価値は下がるものの、巨匠ゆえに市場で20万円台の値段がついて出ています。


※棟方志功の肉筆画をもとにしたエスタンプのリトグラフ(木版画のシャープな彫刻刀のあとが無いのですぐにわかります)

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西洋の凸版画ではリノリウム版というものを用いたリノカットという技法をピカソが多用したことで有名です。しかし微妙な表現がしにくいためにあまり普及しませんでした。


※パブロ・ピカソ リノカット作品

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②石版画「リトグラフ」(平版)

19世紀にヨーロッパでリトグラフの原理が発見されました。


19世紀末にパリで活躍したロートレックのポスターもリトグラフで、、ロートレックは「ポスターを芸術の粋に高めた」ことで美術史上に特筆されています。彼も先回紹介した浮世絵版画によるジャポニズムの影響を受けています。


※ロートレックのリトポスター

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注)ロートレックのリトグラフは現代にエスタンプとして複製されたリトグラフや印刷物がありますが、19世紀末という年代を考えるとオリジナルが日本の市場に出てくることは稀でしょう。


リトグラフは、20世紀前半のパリのモンマルトルやモンパルナスにピカソやシャガールや藤田嗣治など、世界中から個性豊かな画家たちが集まって活動し一大ムーブメントを起こした、いわゆる「エコール・ド・パリ」から現代にかけて最も数多く作られた版画ではないかと思います。


例えばクレヨンの独特の質感や、強い線、きめ細かい線、筆の効果、インクの飛ばした効果など、描写したものをそのまま紙に刷ることができ、作家たちが意のままの芸術表現が出来ることが多用された一つの理由です。


石版画といっても現在は主にアルミ板が使用されています。


※シャガールのリトグラフ「ダフネスとクロエ」より

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③シルクスクリーン(孔版)

セリグラフとも呼びガリ版刷りやプリントごっこが基本原理です。1960年代のアメリカで発達し、有名なところではアンディ・ウォーホルが上げられます。


例えば原画が油絵であれば、絵の具の盛り上がりなどの質感を出しやすい技法です。


※アンディ・ウォーホルのシルクスクリーン

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④銅板画(凹版)

「エッチング」「ドライポイント」「アクアチント」「メゾチント」など。銅版画の技法に興味のある方はこのサイトを参照してください。


銅板画は長谷川潔や浜口陽三が有名ですが、そうした専門の版画家だけでなく日本画家の加山又造も多用しています。ホワン・ミロも得意としました。まだリトグラフが開発される以前、ルネッサンス期のドイツのデューラーや17世紀のオランダのレンブラントなど、オールドマスターのオリジナル版画は技法的には木版画か銅版画です。銅版画が多いようです。


※加山又造のメゾチント作品

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※ミロのアクアチント「モンゴルの鳥」

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⑤オフセット版画・ジークレー版画・等

ジークレーはフランス語で「インクの吹き付け」を意味し、スクリーンを使用せずダイレクトにインクを版画紙やキャンバスに吹き付ける技法で、簡単にいえばスキャナーで読み込んだデータをインクジェットプリンターで印刷するようなものです。


ジークレーなどの現代の技術はエスタンプとして原画を再現するに当たっての正確さはありますが、リトグラフなどに比べると深みや味わいには欠けます。


ただし、手軽で、少ない枚数でも一枚当たりの予算が少なく作れるというメリットはあります。


そしてこれらの混交技法です。例えばリトグラフの上にシルクスクリーンを刷るとか、銅版画のエッチングとアクアチントを併用するとかです。


現代の印刷技術の発展に伴い様々な技法が開発されていると思います。現代アートとテクノロジーの関係について私は勉強不足ですので、残念ながらここに詳しく語るに足りません。


次回はエディションとサインについてです。



芸術作品とは言えないがインテリアとしての複製工芸品



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