絵画の価値(1)「インテリア性」

このシリーズでは絵画の価値をいくつかに分けて説明してゆこうと思います。第一回目は「インテリア性」です。

絵画の価値(2)「財産性・投機性」
絵画の価値(3)「精神性」その1・生き様を映す絵
絵画の価値(4)「精神性」その2・潜在意識の浄化
絵画の価値(5)「情操教育」病める子供たちへ
絵画の価値(6)精神性その3・磯部晶子「本性に語りかける花の絵」


本物の絵(←とってもあいまいな表現ですが)をよく見ている人にとって、ホテルのエントランスやレストランで「いい絵」がかけられていると、それだけで嬉しくなったりします。ただしこういう人は、逆に、高級な内装の建物に芸術性の低い絵や安っぽいインテリア絵画が飾られているのを見ると、そのミスマッチにガッカリしてしまう傾向があります。私もそうですが・・・。

そんなこだわりはさておいて、たとえば自宅の居間やコーヒーショップのようなところにちょっとした版画やポスターでも飾ってあることで部屋の雰囲気は一変します。インテリアとしての絵画はその空間を明るくし広げて見せてくれるものです。

絵を飾ることの効果は、そこに住む人や訪れる人が絵によって「よろこび」「癒され」「落ち着き」「元気をもらい」・・・といった心に作用するものです。

絵画には「よろこび」という説明しがたい情感が伴いますので、「インテリア性」を説明しようとしても、装飾という外的な価値にとどまらず「精神性」という内的な価値につながってしまいます。

ここでは、絵画がインテリアとして飾られたときに、色と空間の奥行きがもたらすものを考えてみようと思います。

●部屋を明るくする絵画(色と光のメカニズム)

芸術作品がインテリアとして飾られるとき、他のインテリアと比較して決定的に違うのがその造形的な力ととともに色の深みです。

物理的な観点から言えば色は光です。光なくして森羅万象の色を認識することは出来ません。絵画や印刷物などの平面におけるあらゆる色は赤・青・黄の三原色の混合で表せます。そして全ての色を混ぜ合わせると「黒」になります。そこから、東洋では水墨画の墨の色(黒=玄)は全ての色を内包している宇宙の色だという思想につながります。

また、その色を空間で、すなわち下図の右(赤)・中(緑)・左(青)の「光」にして混ぜ合わせると「白い光」になります。逆から言えば空の虹やプリズムで現れ出た光の帯は「白い光」が波長別に分けて並べられたものです。

        ■色(光)の波長
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        ←短い波長              長い波長→
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太陽光や蛍光灯などの「白い光」は実は上図のように波長によって分かれた「全ての色」を内包しているのです。太陽光と蛍光灯では絵の見え方が少し違ってくるのは、波長の並びは同じでも深度が違うからです。

光と色の関係を具体的に説明しますと次のようになります。

例えばここに赤い花があります。花には上図の右端から左端までの全ての波長を備えた白い光が当たっています。赤い色の花の部分は上図の赤の波長の光だけを跳ね返し人の目に届きます。それ以外の波長の光も全て同時に花に当たっているのですが反射せずに通過してしまいますので人の目に届きません。そのことで花が赤い色だと認識できるのです。

他の色が見えるのも同様のメカニズムです。

絵画に描かれた多様な色は、実はその色に伴う多様な「光」なのです。水墨画の濃淡もまた変幻する光と言えます。

あくまで私の喩えによる表現ですが、「光」は絵画に照らし出されることによって質的に変化します。絵画の多重層で美しい色の調和が「光」に生命力を吹き込み密度の濃い光となるので、その光は見る者にとって存在感が増します。存在感とは客観的に測られる光の量のことではなく、見る者の主観的な心理に作用する光の質のことです。
絵画の見方(1)「主観的鑑賞」

つまりインテリアとして絵を飾ると、その色による心理的な作用として「圧倒的な光の存在」を感じて部屋が明るくなったと感じるのです。

●暗い絵と明るい絵

インテリアから話が少し離れますが、絵の「明るい」「暗い」は良し悪しではありません。

一見暗い色使いの絵であったとしても、見る人の心理に作用すれば、その人の心の状態を落ち着かせたりさらに明るくしたりします。

暗い部屋に閉じこもっていた人が急に明るいところに出るとまぶしくて目を開けられないのと同じように、内的な闇に対峙している人にとって、ただ明るいだけの絵はあまり長く見ていたいと思わないでしょう。

たとえ暗い色使いの絵でも、その人にとって気に入った絵はちょうどよい明るさでその人の心理に作用しているのです。


●部屋を広く見せる絵画(構図の効果)

平面に描かれた絵画空間は物理的現実には存在しない幻想空間です。

絵画の中でも、特に構図によってあるいは空気の濃淡を描くことによって遠近感を感じさせる作品は、画面に奥行きを感じ、まるで壁の向こうに別の空間が存在しているかのように見えます。

わかりやすのは透視法という遠近法を使った風景画です。ゴッホの作品でいくつか見てゆきましょう。

   ■ゴッホ「ポプラの小道」1884年(54 x 39)ファン・ゴッホ美術館蔵
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   ■ゴッホ「モンマルトルの家庭菜園」1887年 ゴッホ美術館蔵
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■ゴッホ「夜のカフェ(アルルのラマルティーヌ広場)」1888年(70 x 89)エール大学付属美術館蔵
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透視法を応用した絵、例えば上の「モンマルトルの家庭菜園」を部屋にかけて、2メートル離れた場所からその絵を見たとしましょう。絵までの距離は2メートルですから見る人の目の焦点は2メートル先に結ばれています。

ところが、絵を見る人が感じるのは実際の距離とは違います。絵の一番下の部分が2メートル先だとしても、構図上の焦点が結ばれている真ん中あたりに描かれた建物は何十メートルか先を見ているように感じます。

壁にかけられた絵画空間が部屋の空間と連続しているような感覚になり、絵の奥行きによって部屋が広くなったような錯覚を覚えるのです。それは部屋の一方の壁を鏡にすると鏡の中の空間は現実空間ではなくてもまるで部屋と連続しているような錯覚を覚えることに似ています。

具象・抽象に関わらず絵画というものは、現実空間の中に出現した幻想空間ですから、そこに心を遊ばせることで自分が居る現実空間を広く感じさせるという効果があります。

「いい絵というものは絵の中に入って遊べる」と語ったのは詩人の松永伍一です。描かれた事物や空間に生命力が宿されていて実在感があれば、広く感じるという効果はもっと高まります。すなわち印刷物よりも本物の絵のほうが空間の臨場感-広さを感じさせるのです。

また、構図などからくる空間の奥行きや広がりは、見るものの心の中にも奥行きや広がりをもたらします。

日常生活の中で心が萎縮したり狭い心に陥ってしまったりすることがあれば、部屋の中に飾られた一枚の絵画を眺めてみてはどうでしょうか。心の中に広い空間が生まれ、「まあいいか」という思いとともに余裕が生まれてくるかも知れません。


そのうち、「美しく見える絵の飾り方(ディスプレイ)」や「絵を壁にかける方法」などを技術的に解説したいと思います。また、民家からパブリックな建物に至るまで、絵画を中心とした視点で世界中の絵が飾られたお洒落な空間を撮影して分類した写真集でもあれば、きっとそれを見るだけで楽しいし参考になると思うのです。

えっ、そんな内容を期待していた?

どこかの出版社が投資してくれないかなぁ~。

なんのために絵を飾るのか(ピカソの言葉から)


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