五方色「韓国徳寿宮・丹青(タンチョン)」

2012年5月末のソウルは、清清しい初夏の空気と光に溢れていました。今回はソウル市庁舎の近くにある徳寿宮の丹青の紹介と「五方色」について説明します。

■徳寿宮入り口の大漢門(朝鮮時代の装束の衛兵)
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●五方色とは
韓国の朝鮮時代(1392~1910)は国教である儒教が人々の生活と精神を支配しました。中でも質素であることが重んじました。質素さのあらわれとして彼らの生活に根付いた無色の「白衣」はこの民族の呼称となったくらいですが、生活の中を覗いてみれば、原色がいたるところに潜んでいました。

例えば、家々を飾った民画はもとより、枕の左右に施された刺繍やフトンの模様、祝祭のときに着る衣装、葬式のときのお棺の装飾などは鮮やかな原色が使われました。こうした原色は中国から韓国を経て日本にまで伝わった陰陽五行説を理論的根拠にした東洋の伝統的な色使い「五方色」です。

五方色を簡単に述べれば、東・南・西・北・中間という空間の概念に春・夏・秋・冬・無季節という時間の概念が当てはまりますが、それを青・赤・白・黒・黄の原色であらわし、他に五行や五臓等に関係します。これは古代の科学です。

東(春)【肝臓】木
南(夏)【心臓】火
西(秋)【肺】金
北(冬)黒【腎臓】水
中間(無季節)【胃】土


上記の原色を「五方正色」と呼びます。そして中間色である緑・紅(オレンジ色)・碧(水色)・硫黄(茶色)・紫の五色を「五方間色」と呼び、五方色は全部で十色が基本となります。

王宮やお寺の装飾は必ず五方色で、この五方色を調和させることで色彩に宿る宇宙の神聖なエネルギーを取り込もうとする信仰心が根底にありました。

●徳寿宮の丹青

    ■徳寿宮建造物に施された丹青
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    ■近代の建物を丹青風に彩色したもの
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五方色は別名「丹青(タンチョン)」と言います。丹青は「絵の具」や「彩色」をあらわします。丹は赤、青は文字通り青です。

この鮮やかな色彩の配列で徳寿宮のような王宮やお寺を飾ったのです。日本でも仏教が入ってきた当時は寺院にこの丹青を施したのですが、風雨にさらされ経年変化してゆくと自然に剥がれ落ちてきます。それをそのままにして「侘び・寂び」という文化につながったのでしょう。

日本の中で五方色を見ることが出来るのは日光東照宮です。韓国で通常使われている丹青とは趣が違いますが、よく見ると五方色が使われています。ただ単に装飾的な美しさを持たせようとしたのではなく、陰陽五行説に則った彩色の思想があったはずです。

    ■剥がれ落ちてきた丹青
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●現代作家に受け継がれる「五方色」
禁欲的な儒教社会にあって、人々は祝祭のときや生活の中に原色のささやかな喜びを見出したのでしょう。それは儒教的抑圧からの解放の役割を果たしたに違いありません。

韓国の現代作家の作品にこの五方色的な原色が表われ出したのは1980年代以降の民主化の波が高まった頃で、これもまた軍事政権からの解放の時期です。

五方色を使って描いた代表的な作家に朴生光(1904~1985年)、金鳳台(キム・ボンテ)李重煕(イ・ジュンヒ)、李斗植、金圭泰などが上げられますが、もっと幅広く見た場合、閔庚甲(ミン・ギョンカプ)の作品の中にはセットンと呼ばれる原色の配列が現代的な表現構成に絡めて登場します。閔庚甲はセットンを使うことで自然に宿されたエネルギーの律動をあらわすとともに五方色を愛した民族的な情感を表現したのです。

尚、徳寿宮の中には国立現代美術館の分館があります。またの機会に紹介しましょう。
韓流ファインアート・韓国の画家紹介

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