小説「貴婦人と一角獣」(その3最終回)by RYOTA

小説「貴婦人と一角獣」by RYOTAの最終回です。

小説「貴婦人と一角獣」(その1)by RYOTA
小説「貴婦人と一角獣」(その2)by RYOTA

■貴婦人と一角獣「我が唯一の望み」
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 明美はいつしか自らの記憶を訪ねながら人生を振り返ってみていた。
 そして短い沈黙の時間から醒めると、一角獣は消え、目の前には貴族の姿をした男が立っているではないか。
 「やっとめぐり逢えたね。お前が転生の旅をつづけている間、私はいつも遠くからお前を見守っていた。はじめてお前と出会ったときを思い起こしながら・・・。あのタピスリーは私がお前に出会ったことの証なのだよ。」
 
 「はじめてお前を『視た』ときにその清楚な美しさに心が奪われた。
  お前の澄んだ歌声を『聴いた』ときに深く癒された。
  お前の細く白いうなじから漂う芳しい香りを『嗅いで』酔いしれた。
  お前との口づけがくれた甘い『味覚』に胸がときめいた。
  そしてお前の柔らかな肌に『触れた』とき心から欲したものがある。
  それは、お前の『清らかな魂』。
  そのためにはこの五感で感じたもの全てを捨ててもいいと思った。」

 「それこそが『我が唯一の望み』である。」

 「このタピスリーの中の私、つまり一角獣は、実はタピスリーの注文主アントワーヌ・ルヴィスト本人だった。そして妻ジャクリーンこそがお前だ。つまり私が私とお前をタピスリーの中に描かせたのだよ。お前が私に見せてくれた魂の輝きを永くこの世にとどめておきたかったのだ。」
 その声ははっきりと耳に届く男の肉声だった。
 明美は深く考えることが苦手だった。頭がくらくらしてきた。こめかみを押さえてしばらくの間しゃがみこんでいたが、再び立ち上がったときには男はもとの一角獣の姿に戻っていた。そしてまた語り始めた。
 「ブルーの天幕の奥は神聖なる宇宙の始まりに繋がっている。その前でお前は物質を象徴した宝石を箱に戻した。物質世界の肉体を持つ身にとってこの世の栄華は魅力に満ちている。しかしそれよりも至高の清らかな魂、つまり『我が唯一の望み』、お前はそれを選んだのだ。天幕の前でお前が為した行為は物質が生まれる前の全てが潜在する宇宙に帰ることに等しい。それはすべてを新たに生み変える力につながる。」
 そして一角獣は決意を込めて言った。
 「お前の転生の旅の末にやっと時がめぐって来た。お前にはやらなければならないことがある。」
 「何よそれっ?」なかばやけになって明美は訊ねた。
 一角獣は明美の目を見つめた。そして低い声でささやいた。
 「地球を生み変えなさい。それは私が交わした神との約束だ。」
 「バカなこと言わないでよ。いったい私に何ができるっていうのよ。」
 「それほど大それたことではない。2013年、地球はお前のような魂によってその意識を高めるときが来たのだよ。」
 一角獣は明美の前で背をかがめた。
 「私は再びお前にめぐり逢えたことで中世の時と空間から解き放たれた。私の背中に乗ってたてがみにつかまりなさい。宇宙の秘密を見せてあげよう。」
 明美は一角獣の背にしがみついて尋ねた。
 「あなたは神さまなの。」
 「いや、そうじゃない。」
 「じゃあ、いったいなんなのよ~。」

 「私は・・・お前だ。」

 ・・・・・
 「あけみ。あけみったら。」
 美術館の中の長椅子に腰掛け眠りこけている明美を呼ぶ声がした。一緒に来た園子である。
 「どうしたの?疲れちゃったのね。貴婦人と一角獣よかったわ。期待以上で私興奮しちゃった。」
 「そうね・・・」
 明美の手には一角獣の柔らかなたてがみに触れた生々しい感覚が残っていた。
 「お腹すいた。なんか美味しいもの食べに行こう!」園子が誘った。
 「そうしよ。私もお腹すいちゃった。」

 たてがみを風になびかせながら二人の姿を見つめる一角獣の姿が、美術館の屋根に据えられたモニュメントのように聳えている。これは壮大な物語のほんの始まりにすぎなかった。

 
小説「貴婦人と一角獣」(その1)by RYOTA
小説「貴婦人と一角獣」(その2)by RYOTA
小説「貴婦人と一角獣」(あとがきと続編ストーリー)
■貴婦人と一角獣「聴覚」
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「おどりを踊る二人」(徐世鈺)からの物語

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